研究課題
これまでタバコBY-2細胞などを材料に細胞内構造をラベルした細胞(可視化細胞)やイメージング・画像定量解析およびシミュレーションの手法を独自に開発して、細胞骨格等の動態や細胞形態形成の画像情報処理による解析を行ってきた。これらの経験をもとに、本申請研究では、複雑な形態をとるシロイヌナズナ葉表皮細胞の形態形成過程やおける細胞形状と細胞連結様式を組織レベルで可視化して解析した。特に、細胞壁の主成分であるセルロースを分解する酵素(セルラーゼ)を植物の葉に処理すると葉の表面をつくる細胞がジグソーパズルのように複雑に入り組んだ形から単純にまっすぐ伸びた形へと変化すること、および葉の細胞のジグソーパズル型の形づくりに重要な役割を果たすことが知られていたRIC1という微小管結合タンパク質に注目し、RIC1のセルラーゼ応答における役割を解析した。その結果、RIC1を欠損する変異体ではセルラーゼを処理してもジグソーパズル型の細胞形状に顕著な変化が認められないことを見出した。この観察結果を受けて、九州大学大学院医学研究院の今村寿子助教、三浦岳教授らのグループと協働して、植物細胞壁の力学シミュレーション解析を行った。その結果、RIC1を欠損する変異体ではセルラーゼ処理に応答して細胞壁が過剰に合成され、結果として圧縮力によるひずみが細胞壁に生じてジグソーパズル型に変形する可能性が示された。本研究によって、植物細胞壁の外部刺激応答機構においてRIC1タンパク質が主要な役割を果たすことが明らかになったと考えられる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
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