研究課題
葉緑体やミトコンドリアのような二重の膜で囲まれたオルガネラと小胞体やゴルジ体などの一重の膜で形成されるオルガネラ(単膜系オルガネラ)は、それぞれ独立して機能していると考えられてきた。しかし、我々のグループによるシロイヌナズナを用いた研究の結果から、トランンスゴルジ網(TGN)と呼ばれるゴルジ体に隣接して存在する網目状の構造体で、ゴルジ体を通過したタンパク質が機能すべき場所に正しく輸送されるための選別を行うオルガネラが、環境ストレス下で葉緑体の機能維持に関与することが明らかとなったが、その分子機構や高次機能は未解明である。本研究課題では、 “単膜系オルガネラが担う新規の葉緑体機能の発現・維持機構を分子レベルで解明する”ことを目的としている。H27年度は以下の研究成果を得た。①TGNと葉緑体を異なる蛍光タンパク質で標識した形質転換体を当研究室で開発された超解像ライブイメージング顕微鏡(SCLIM)で観察したが、葉緑体の自家蛍光が強いため綺麗な画像を得ることができなかった。現在、観察条件を検討中である。②syp4変異体では、環境ストレス下で葉緑体の機能維持が出来なくなっているため、単膜系オルガネラが葉緑体機能を制御する因子の単離を行うため、TGNに注目した2種類のプロテオーム解析を行うための準備をおこなった。③syp4変異体の種子を変異誘導剤であるエチルメタンスルホン酸(EMS)で処理したM2種子から葉緑体の表現型が抑圧された変異体を複数系統単離した。原因遺伝子を同定するための準備をすすめている。
2: おおむね順調に進展している
TGNと葉緑体を超解像ライブイメージングにより観察するシステムの構築には時間がかかっているが、葉緑体の表現型が抑圧された変異体を複数系統単離したことにより、研究が大きく進む可能性がある。
葉緑体の自家蛍光をカットするフィルターを装着することで、TGNと葉緑体の超解像ライブイメージング観察を行うシステムを構築する。抑圧変異体の原因遺伝子を同定し、それらの遺伝子の機能解析(細胞内局在、変異体の表現型等)を詳細に行うことで、TGNと葉緑体の関係について分子レベルで理解する。
遺伝子組み換え植物の作出が遅れたため消耗品の使用が予定より少なくなったため。
解析用の遺伝子組み換え植物は既に完成したため、本年度はこの植物を用いて生化学的解析および細胞生物学的解析を重点的に行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Plant Cell Physiol.
巻: 57 ページ: 307-24
doi: 10.1093/pcp/pcv076
Plant Biotechnology
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