植物免疫系を誘導するホルモンであるサリチル酸(SA)の合成やSAの初期認識に関与する可能性のある遺伝子群を選抜した。解析に供試した発現データは、1)4週齢の野生型シロイヌナズナ(Col-0)葉に病原性細菌であり、強いSA依存的免疫機構を活性化するP. syringae avrRpt2を接種したもの、2)同病原菌をNPR1欠損変異体であるnpr1植物葉に接種したもの、3)播種後12日目のCol-0葉に病原性糸状菌であるHyaloperonospora arabidopsidisを接種したもの、4)同齢のCol-0葉に細菌の鞭毛成分であるflg22を処理し、免疫系を活性化したもの、5)4週齢のCol-0葉にUV-Bを曝露したもの、6)同齢のCol-0葉にオゾンを曝露したもの、7)同じくCol-0葉に一酸化窒素を処理したもの、そして、8)SA合成系を活性化する、SAアナログのBTHを処理した4週齢の葉、由来のものを用いた。各刺激においてSAが合成されることは確認している。各刺激に応答して有意に発現上昇している遺伝子を選抜し、各マイクロアレイデータの全てにおいて陽性を示した約350遺伝子をSA合成関連遺伝子群とした。 選抜遺伝子群をシス解析プログラムに供試した結果、WRKY転写因子が認識するW-boxやTGA転写因子が認識するTGA-boxが同定された。最も高頻度に検出されたシス配列候補はLS10と呼ばれる配列であり、現在までに対応する転写因子は未同定である。本シス配列を認識する転写因子を同定するために、選抜遺伝子群に含まれる22転写因子を無細胞タンパク質合成系を用いて合成し、AlphaScreenシステムにより、シス候補配列との結合の有無を調査した。その結果、同シス候補を認識するLS10認識転写因子、LST1を同定した。
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