研究課題/領域番号 |
15K14547
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
深城 英弘 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80324979)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 維管束書植物 / 茎 / 内皮 / 放射パターン / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、維管束植物の茎の組織形成および放射パターン形成の機構を理解することを大きな目標として、茎の基本組織である内皮に注目し、研究材料の工夫と近年開発された観察技術を利用して、茎頂分裂組織(Shoot Apical Meristem; SAM)における内皮幹細胞と内皮形成関連遺伝子群の同定を行う。これにより茎の内皮形成機構の解明に向けた研究基盤を整備する。特に本研究では、側方器官である花芽を形成しないシロイヌナズナpin-formed1(pin1)変異体の花茎SAMをモデルとして、茎の内皮幹細胞の同定と、内皮形成の機構解明に取り組む。今年度、茎の内皮を欠失するshort-root(shr)変異体、およびscarecrow(scr)変異体と、pin1変異体との二重変異体(pin1 shr、pin1 scr)を作成した。また、SAMで働く内皮幹細胞特異的遺伝子や内皮形成関連遺伝子を効率的に同定する目的で、これらの花茎SAMの遺伝子発現プロファイルを比較するためのサンプルの検討を行った。さらに、茎の内皮特異的マーカー遺伝子として、SCR遺伝子のプロモーターの制御下で核局在蛍光レポータータンパク質などを発現させるコンストラクトを、pin1変異体に導入した。今後、野生型、shr、scr、およびpin1、pin1 shr、pin1 scrを用いて、1)組織学的観察、新規開発された組織の透明化方法による高解像度ホールマウントイメージング、レポーター遺伝子の発現解析を行い、SAM構造と内皮細胞系譜を立体的に捉えるとともに、2)マイクロアレイ解析による遺伝子発現プロファイル比較から、茎の内皮幹細胞特異的遺伝子や内皮形成関連遺伝子を同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
茎の内皮を欠失するshort-root(shr)変異体、およびscarecrow(scr)変異体と、pin1変異体との二重変異体(pin1 shr、pin1 scr)を作出することに成功し、本研究に必要となる実験材料を準備できた。また、茎の内皮特異的マーカー遺伝子として、SCR遺伝子のプロモーターの制御下で核局在蛍光レポータータンパク質などを発現させるコンストラクトをpin1変異体に導入した系統を確立するとともに、花茎SAMの遺伝子発現プロファイル比較のためのサンプル検討を終えた。これらにより計画した実験をスムーズに次年度に行うことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
1)野生型、shr、scr、およびpin1、pin1 shr、pin1 scrを用いて、1)組織学的観察、新規開発された組織の透明化方法による高解像度ホールマウントイメージング、レポーター遺伝子の発現解析を行い、SAM構造と内皮細胞系譜を立体的に捉え、内皮形成部位における細胞分裂様式の比較から内皮幹細胞を同定する。 2)上記の野生型、変異体系統を用いたマイクロアレイ解析を行い、遺伝子発現プロファイル比較から、茎の内皮幹細胞特異的遺伝子候補や内皮形成関連遺伝子候補を同定し、既存の発現データベース情報を参照し、特徴付けを行う。また、絞り込まれた遺伝子については、野生型の花茎SAMにおける発現解析、機能解析を行い、茎の内皮形成に関わる内皮幹細胞特異的遺伝子、内皮形成関連遺伝子を同定する。
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