本研究では、これまで申請者が独自に作製してきたトランスジェニック植物体を活用し、花が咲く時に植物体で起きるエピジェネティックおよびシグナル伝達系の変化を解析することにより、「Deathホルモン」―花からメリステムに至る新規シグナルの分子的実体やそのシグナル経路を同定することを目指して研究を行ってきた。本研究では、花が咲く時に植物体、特にメリステムで起きる変化をエピジェネティックと植物ホルモンシグナルの二面に着目して解析を行っている。我々は、遺伝学的、生化学的解析によりKNUタンパク質によるWUS遺伝子の抑制は、WUS の活性化因子であるSPLAYED (SYD)の「排除」とポリコム因子の「導入」による二段階の転写抑制機構を見いだした。転写抑制機構の新規メカニズム機構として論文投稿しており、現在リバイズにて実験を補足中である。さらに、花が咲く時に起きるメリステム間のシグナル伝達を明らかにするために、カルシウムのバイオセンサーを作出した。これはすでに動物で報告されていたものを植物コドンに最適化したものを作出し、トランスジェニック植物を作成している。さらに植物ホルモンを植物体内でリアルタイムに定量性をもって検出するために、さまざまな植物ホルモンを特異的に認識する分子とシグナルを発する分子を利用したバイオセンサーを作成中である。現在、2種類の植物ホルモンそれぞれに特異的検出して、そのうち一つは300%程度のシグナルが変化するセンサーが得られており、有望である。これらの候補に、さまざまな改変を加えスクリーニングすることで、それぞれのホルモン依存的に大きくシグナルが変化するバイオセンサー作出に努めている。
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