研究課題
ラン科植物の菌根共生系は、一般的な相利共生の菌根共生系とは逆に、菌類から植物に炭素化合物が供給されるという菌寄生性の特徴をもつ。単子葉植物、双子葉植物問わず、相利の共生系の確立には共通の遺伝子群が必要であることが報告されているが、ラン科植物を含む菌寄生性の共生に関する分子レベルでの知見は全く無いのが現状である。本研究では、「ラン科植物の”菌寄生性共生”の成立には相利共生の共通共生経路の遺伝子群が必要か?」についての回答を得ることを最終目標として研究を実施した。平成29年度は、ラン科植物シランの共生発芽サンプルを経時的にサンプリングし、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を実施した結果、相利共生の共通共生遺伝子群のオルソログが高度に保存されていることを明らかにした。また、相利共生の共生マーカー遺伝子群のオルソログが、シランの共生時にも発現が顕著に誘導されることも明らかにした。また、シランのCCaMK遺伝子については根粒共生だけでなく菌根共生の際にもミヤコグサのcccamk-3変異体の変異を相補できることを明らかにした。研究期間内に得られた結果は、「ラン科植物の”菌寄生性共生”の成立には相利共生の共通共生経路の遺伝子群が必要である」を強く示唆している。本成果の内容の論文は、2018年にMolecular Plant Microbe Interactions誌に掲載された。予定していた遺伝子組換え実験系がうまく構築できなかったため、「ラン科植物の”菌寄生性共生”の成立には相利共生の共通共生経路の遺伝子群が必要である」ことに関して、直接的な証明はできなかった。これまでの成果を基に、今後ラン科植物の”菌寄生性共生”の制御メカニズムを明らかにしていく予定であるが、その際にも遺伝子組換え実験系が必要となるため、引き続き実験系の構築に取り組んでいく予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
Molecular Plant Microbe Interactions
巻: 31 ページ: -
10.1094/MPMI-01-18-0029-R