研究課題
平成27年度にバイオパニングにより作成した金親和性タグ(Au3とAu13)を反応中心タンパクPsaBのN末端に融合した光化学系1複合体を発現する葉緑体形質転換体を作出に成功した。平成28年度は鉄硫黄タンパクPsaCのストロマ露出領域のアミノ酸配列(LT2)を金親和性タグ(Au3とAu13)と置換して得られた葉緑体形質転換体の作出に成功し、その解析を進めた。いずれの形質転換体も光化学系1複合体の蓄積をウェスタン分析により調べ、蓄積量は野生株のそれとほぼ同じであることが示された。また、さらに、光化学系1反応中心クロロフィルであるP700の光酸化活性をジョリオ型分光光度計で測定し、形質転換体の光化学系1複合体は野生株の複合体と同等の活性があることを明らかにした。従って、タグ融合が光化学系1複合体の安定性と活性に影響を与えないことを確かめることができた。さらに、Au3タグの間にフレキシブルリンカー(FL)を挿入させた光化学系1複合体を発現する葉緑体形質転換体の作出にも成功した。しかし、2から3のAu3タグをタンデムに並べて融合させた光化学系1複合体を発現する葉緑体形質転換体を作出したが、複合体が不安定となり、正常に蓄積しないことが分かった。得られた葉緑体形質転換体からチラコイド膜を単離し、それを温和な界面活性剤であるドデシルマルトシドで可溶化し、ショ糖密度超遠心法で光化学系1複合体を精製した。それを金電極に配位させて結合させ、電子供与体であるDCIPとアスコルビン酸存在下で光照射し、電流の発生の検出を試みた。その結果、いずれのタグ融合した光化学系1複合体も電力発生が検出され、金電極に活性を保持したまま、配向を揃えて結合させることに成功した。タグを融合しない野生型の光化学系1複合体は電流の発生がほとんど認められなかったため、タグの融合は有効であることを証明することができた。
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