本研究では、メキシコサラマンダーにおいて再生誘導物質が「四肢だけ」に効くのかという検証をした。これまで、四肢とその他器官の再生能力は違う現象として扱われてきたと言える。しかし、イモリ等の再生できる動物は四肢だけではなく、その他多くの器官を再生できる。反面、再生できない動物は、大規模な損傷に際してほとんどの器官を再生することができない。これは、再生できる動物に多器官に渡る基盤的な再生メカニズムがある事を意味するのではないだろうか?その様な基盤的再生メカニズムが存在するならば、BMP+FGF と言う再生誘導物質に四肢だけではなく、他の器官も応答できる可能性がある。本研究によって個体全体に渡って高い再生能力を維持する基盤的メカニズムにアプローチできれば、その学術的意義は大きいと考える。 再生誘導物質(BMP7+FGF2+FGF8)を尻尾・目(レンズ)に応用し、反応能の有無を組織 学的手法・分子生物学的手法によって検証した。当研究室で作成した徐放性ビーズに再生誘導物質であるBMP+FGFのカクテルを染み込ませ、再生反応の誘導箇所に埋め込んだ。再生反応が進んでいるかをマーカー遺伝子の発現を指標に分子生物学的解析を進めた。BMP7+Fgf2+Fgf8が器官横断的に再生反応を惹起できることを実証した。器官横断的な再生反応を支える詳細な分子実体までは明らかにすることができなかったが、分子実体の解明 のための基盤的データをすべて揃えることができた。
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