1.CRISPR/Cas9システムのような人工ヌクレアーゼを用いたゲノム編集技術は遺伝子の機能解析に有効であるが、解析のために必要な同一変異個体集団を得るためにはF1もしくはF2を作成する必要がある。そのため、両生類のような性成熟期間が長い動物では解析までに長い時間を要していた。その欠点を克服するために、ゲノム編集した個体の細胞核を未受精卵に核移植する技術を確立して、短時間で同一変異個体集団を作成することを試みた。昨年度までに未受精卵から簡便かつ効率よく除核する方法を確立し、核移植個体作成に成功していた。本年度は、CRISPRでtyrosinase遺伝子に変異を入れたゲノム編集個体を作成し、中期原腸胚まで発生したところで核移植を行い、さらにこの個体が中期原腸胚まで発生したところで再度核移植を行った。その結果、同一変異を持つクローン集団を作成することに成功した。 2.核移植を成功させるためには、遅くとも神経胚から初期尾芽胚の細胞核を用いる必要があった。核移植後3日目には初期尾芽胚になることから、どの個体に目的の遺伝子変異が入っているか解析するには時間が短すぎる。そのことを克服するため、中期原腸胚の細胞塊を凍結保存する技術の開発を行った。一般に、卵黄が多い動物種の胚を凍結保存することは難しいとされているが、ガラス化法で凍結し解凍した細胞の核を除核卵に核移植することで、オタマジャクシまで発生した個体を得ることに成功した。この成果は、ゲノム編集した胚の中でどれが目的の変異を有しているか解析するための時間を確保できるばかりか、有用変異個体の胚を凍結保存することで、必要に応じて変異個体を入手することが可能になり、バイオリソースの観点からも注目すべき成果である。
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