近年のGFPなどの蛍光タンパク質、およびルシフェラーゼなどの発光タンパク質を応用したイメージング技術の発展により、生体内での様々な生命現象のバイオイメージングが可能となった。しかしながら、ほとんどの生体組織は不透明であるために、その深部を観察することは非常に困難である。本プロジェクトでは、透明な生物のモデル生物として、海洋生物であるレプトケファルスを研究対象とし、どうして透明に見えるのかを明らかにすることを目指した。本年度は特に、クロマチン高次構造と透明性についての関連を見出すことを目指した。まず、組織レベルでの透明性を検証するために、レプトケファルスを含む様々な動物種での組織標本の作成をおこない、透明性の評価をおこなった。また、透明性の指数とクロマチン高次構造との相関を探るために、細胞レベルで核の構造を解析した。ここでは、特にヘテロクロマチンの構造に注目するために、細胞をDAPI染色、およびヒストン修飾(H3K9me3など)で染色し、その核内での分布を、蛍光顕微鏡を用いて観察した。次に、レプトケファルスの組織のうち、透明度の高い組織(表皮)と、透明度の低い組織標本(消化器官)を作製し、それぞれの核内構造を3次元構築することでより詳細に解析した。現在のところ、両者の間で、大きなクロマチン高次構造の変化は観察されず、クロマチン高次構造と透明性との相関は見られていないが、更なる詳細な解析が引き続き必要である。
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