研究課題
申請者らは最近、青色光に反応して生体反応を調節するBLUF(Blue-light using FAD)ドメインをもつタンパク質DYBLUPを分子モーターダイニンのサブユニットとして同定した。DYBLUPは2頭内腕ダイニンのモータードメインに結合しており、分子モーター活性を直接制御する新規のタンパク質である可能性が高い。そこで、本研究はDYBLUPがもつ基本的な特性と、DYBLUPによるダイニンのモーター活性の光調節を調べることにより、青色光による分子モーターと鞭毛繊毛の制御を検証することを目的として進めた。まず、これまでDYBLUPの存在を明らかにしたホヤ精子鞭毛を用いた研究の結果、リガンドの候補と考えられるFADあるいはFMNといったフラビンヌクレオチドがDYBLUPに結合しうることを示した。鞭毛軸糸画分にもこれらの低分子が含まれることも示したが、DYBLUPとの直接結合を示すまでには至らなかった。また、様々な波長に対する精子運動も調べたが、顕著な変化は認められなかった。次にクラミドモナスのDYBLUPオルソログに対する抗体を用いた研究の結果、DYBLUPがクラミドモナス鞭毛にも存在すること、2頭内腕ダイニン欠損株ではその量が激減することから、ホヤと同様の機能を有することが示唆された。さらに、CLiPライブラリーからDYBLUPに変異のあるミュータントを検索した結果、MOT7遺伝子に挿入変異のあるものが見つかった。この変異体を入手し、運動解析を行なった結果、遊泳速度の低下と走光性及び光驚愕反応において野生株との違いが見られた。この違いは青色光を用いた場合に顕著であり、BLUFドメインの光受容機構とも一致する。今後、ミュータントと野生株が示す運動性の違いについてより詳細な解析を行うとともに、DYBLUP/MOT7による光受容とモーター制御機構について解析する必要がある。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Eur J Phycol
巻: 51 ページ: 139-148
10.1371/journal.pgen.1006001
http://www.shimoda.tsukuba.ac.jp/~inaba/publish.html