研究課題
私たちは超好熱細菌Pyrococcus abyssi由来のR.PabIが塩基切り出し型制限酵素であることを報告している。そのカンピロバクターCampylobacter coliおよびピロリ菌Helicobacter pyloriのホモログを、遺伝子合成によって大腸菌で発現し、精製し認識配列GTACでのDNA切断活性とこの認識配列内のAがメチル化されていない場合の塩基切り出し活性を証明した。カンピロバクターのホモログR.CcoLIについては、APリアーゼ活性を、APサイトを持つオリゴヌクレオチドを基質として証明した。R.PabIをもつ大腸菌にバクテリオファージ・ラムダを感染させ制限が効率よく起きることを示した。大腸菌のAPエンドヌクレアーゼの変異体では、この制限が著しく弱くなることを発見した。R.PabIで処理して鎖切断を起こしていないプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションで導入した時の効率の低下によって制限を見る系でも、大腸菌のAPエンドヌクレアーゼの変異体で制限が弱くなることを発見した。これらは、PabIファミリーの制限作用をAPエンドヌクレアーゼが促進することを示す。APエンドヌクレアーゼは、塩基切り出し後に、その5’のサイトに切断を入れ修復を促進することが知られていた。私たちの以上の結果は、これまでDNA損傷の修復にかかわると考えられていた塩基切り出し経路の酵素群が、DNAを損傷することに関与することを示した点で、画期的である。この制限酵素遺伝子ファミリーの分子進化を解析した。それらがRMを単位とした動く遺伝子であること、Campylobacter目で伝わってきたことを明らかにした。ピロリ菌の完全ゲノム配列からこの遺伝子が東アジア株の一部とアメリカ先住民株で失われていること、マレーシアで東アジア株とインド株の組み換えがこの遺伝子座で起きていることを発見した。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
「種生物学研究」第39号「エコロジカル・エピジェネティクス-生物の柔軟性の分子生態学-」
巻: - ページ: -
化学と生物 日本農芸化学会
BMC Genomics
巻: 16 ページ: 817
10.1186/s12864-015-2021-3