研究課題
アナナスショウジョウバエの単為発生に関して2点、解析を行った。単為生殖系統の有性生殖系統への戻し交配実験により、単為発生の成立に必須な染色体領域約2 Mbpが特定されている。この領域には約200個の遺伝子があると考えられている。しかし、この遺伝子の情報から単為発生と関連のある遺伝子を見いだすことは困難であった。そのため、この領域の遺伝子について、さらにタンパク質のドメイン解析を行うなどして、母性効果により中心体の新規合成を引き起こす可能性のある遺伝子を探す必要がある。第二に、単為発生に必須な、卵細胞質で新規合成される中心体と、有性生殖系統の受精卵で形成される中心体を超解像顕微鏡で解析した。卵は中心体のPCMの中核に存在するAsterlessタンパク質に対する抗体を用いて免疫染色した。Asterlessの集合体は、有性生殖系統の受精卵ではほぼ一定の大きさを示した。単為生殖系統の未受精卵でもAslは認められた。しかし、有糸分裂に関わっている中心体であっても形状が有性生殖系統のように一定ではなく、長さの測定が困難であることが分かった。新規合成された中心体も微小管形成能はもつが、精子の中心小体をもとに形成された中心体と構造的に異なることが分かった。最後に、キイロショウジョウバエの新しい母性効果遺伝子Elysの細胞学的解析を行った。Elys変異は雌不妊である。これは強い母性効果により受精卵の発生が第1回目の有糸分裂で停止することによることが分かった。このとき、核膜とM期の中心体の挙動に異常が認められた。Elysの正常なはたらきは、有性生殖において、2つの一倍体核から二倍体核を形成する過程に必須である。同様の表現型が、Nup160[sim]イントログレッション雌でも認められた。本研究により、受精に関わる新しい遺伝子を2つ明らかにすることができた。
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