これまで、別マウス亜種由来のY染色体をC57BL/6J (B6/J)系統に導入したYコンソミック系統を用いて経世代遺伝効果(TGE)を観察してきたが、B6/J系統では、エネルギー代謝系の表現型に個体によるバラツキが出ることが報告されている。従って、TGEのエピゲノム解析を詳細に実施するためには、バラツキが少ないことが知られているB6/N系統の遺伝的背景にY染色体を置換することが重要と考えられた。そこで、エピゲノム解析を本格的に開始する前に、時間が掛かっても遺伝的背景の置換を先に行うことにした。このため、当初の実験計画を一部変更し、既存のY-染色体コンソミック系統をB6/Nへ戻し交配を進めた。さらに、このB6/N系統の遺伝的背景での表現型情報の収集を改めて行った。本研究計画期間内に、既存のY-コンソミック系統群の遺伝的背景をB6/Nに置き換えるための交配を行い、世代を6-7代進めることができた。この中から、最新の世代を使用した糖代謝を含むエネルギー代謝関連表現型の収集を行った。また、これまでに作製したY-コンソミック系統を使用した表現型解析のデータ拡充、ならびに肝臓と筋肉を標的組織としたトランスクリプトーム解析やメチローム解析に使用するための組織の収集と保管、さらにはオス個体精子(始原生殖細胞:PGC)を材料として行うための試料の収集についても行った。5メチルシトシン抗体を用いた免疫沈降と大規模シーケンシングを組み合わせたMeDIP-Seq法などによる、ゲノムワイドなメチル化部位の検出については、費用対効果を考慮して糖代謝を含むエネルギー代謝関連表現型データの結果の拡充を待って行うこととした。今後の研究により、トランスクリトーム解析のデータと統合したTGE原因遺伝子の同定につなげたい。
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