研究課題/領域番号 |
15K14580
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 久義 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40250104)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 雌雄同体 / 雌雄異体 / 性決定遺伝子 / 進化 |
研究実績の概要 |
群体性ボルボックス目は性の進化研究のモデル生物群と考えられており、卵生殖で500以上の細胞をもつボルボックス(Volvox)が頂点である。本属は形態的に4節に分類され (Smith 1944, Trans. Am. Microsc. Soc.)、細胞間の原形質連絡を欠くMerrillosphaera節のV. carteri が最も良く研究されている。Starr (1971, Cont. Phycol.)はMerrillosphaera 節の "V. africanus" を世界各地から収集し、有性生殖の4タイプを報告した。Coleman (1999, PNAS) はITS2配列の解析からヘテロタリック雌雄異体の "HeDタイプ" がホモタリックの3タイプと姉妹群を形成することを明らかにした。しかし、現在ホモタリック株は入手できず、入手可能なHeDタイプの株も古いので、OTOKOGI 遺伝子に着目した研究は停止していた。最近、我々は琵琶湖から無性群体の形態から V. africanus と同定される複数の培養株を確立した。有性生殖はStarr (1971)のホモタリックで同一の株で雌雄同体群体と雄群体を作る "HoM+mタイプ" とHeDタイプであった。両タイプは分子情報ならびに接合子と群体の細胞外基質の形態で識別された。Starr (1971)は両形態を観察していないが、Smith (1944) 以前の原記載を含む世界各地からの V. africanus の報告を基にすると、今回のHoM+mタイプは V. africanus で、HeDタイプは新種であると結論された。また、これらの2種から縮重プライマーを用いてOTOKGI ホモログを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雌雄異体と雌雄同体の近縁なボルボックス2種の新規培養株を確立し、それぞれからOTOKOGIホモログを得ることができた。また、これら2種の分類学的成果は論文となった。
|
今後の研究の推進方策 |
抗ボルボックスOTOKOGIの特異的抗体を作製する。得られた抗体を用いたウエスタンブロット解析により、MID-OTOKOGIタンパク質の発現パターンの解析を実施する。また、2種のプロモーター領域を含んだOTOKOGIホモログをVolvox carteri のメス株にVcMID を導入し、メスの卵に相当する細胞が精子形成するかどうか検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ボルボックスのホモタリック種のRNAseq発現解析とOTOKOGI抗体を作製する予定であったが、試料の調整に時間がかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
ボルボックスのホモタリック種のRNAseq発現解析とOTOKOGI抗体を作製するための委託・物品費に使用する。
|