研究課題/領域番号 |
15K14581
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡ノ谷 一夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30211121)
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研究分担者 |
池渕 万季 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (20398994)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ジュウシマツ / コシジロキンパラ / 家畜化症候群 / 扁桃体 / 口吻長 / 鳴管 / 歌の進化 / 言語の進化 |
研究実績の概要 |
家畜化された哺乳動物には、白斑・短い顔・低いストレスなど共通した形質がみられ、これを家畜化症候群と呼ぶ。この現象は神経堤細胞の移動の遅れに起因するという仮説が2014年に提出された。鳴禽であるジュウシマツはコシジロキンパラを祖先とする。この鳥が家禽化される過程でストレスレベルが減少し、さえずりが複雑化してその制御神経系が拡大していることを私たちは発見した。本研究は、これらの変化が家畜化症候群の神経堤細胞仮説として統合的に理解できるかを検討する。ヒトの言語も自己家畜化によって生じた形質だとする説もある。この仮説を利用して、ヒトと鳥を同列に比較し、歌の複雑化を手がかりに言語の進化について新奇な着想を得るのが本研究の究極の目的である。 家畜化症候群の神経堤細胞仮説が予測する形質変化のうち、口吻長(体重で基準化)・脳容量(全脳で基準化)、鳴管の左右不均衡性について、家禽種であるジュウシマツとその野生種であるコシジロキンパラとで比較した。口吻長については、ジュウシマツのほうが短く、家畜化症候群に沿う結果であった。脳容量については、歌制御系であるAreaXとHVCはジュウシマツのほうが大きかったが、扁桃体に対応するTaeniae核においては亜種間で差が見られなかった。鳴管については左右不均衡性に亜種間差はなく、家畜化症候群の予測は確認されなかった。 さらに、コシジロキンパラとジュウシマツの比較ゲノム解析から、家禽化によって変化が生じた部位を同定する研究を、カリフォルニア大学バークレー校・カリフォルニア大学ロサンジェルス校、およびデューク大学と共同で進めている。 以上から、2015年度の研究によって、ジュウシマツの形質が家禽化によるという仮説の一部は確認されたが、一部は確認されなかった。今後、測定パラメータと測定個体を増やし、この仮説の検討をさらに進めてゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、多様な計測値にもとづき、ジュウシマツとコシジロキンパラを比較し、家畜化症候群仮説を検討することを目的とした。2016年度は、3つの指標について成果を得、口吻長について家畜化症候群仮説に合致するデータを得た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は平成28度で終了なので、コシジロキンパラとジュウシマツの比較ゲノム解析を進め、予備的なデータを得て、次の研究につなげることが大切である。このため、海外研究者と密な連絡を取っている。 口吻長・脳容量・鳴管の計測については、さらにデータを増やした上論文化を目指している。 あらたに追加する研究として、オキシトシン遺伝子の発現パターンを亜種間で比較することを 検討している。オキシトシン遺伝子は、養育行動の増強によって脳内分布を増やしている可能性がある。ジュウシマツの家禽化で生じた変化の一つは、まさにこの養育行動の増強であるからだ。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文化のための英文校閲料を使用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文化のための英文校閲料として使用する。
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