ゲノム上の突然変異率がユニフォームでないことは、動物・植物・細菌で示されている。一方、酵母に代表される菌類では、突然変異率が一様であることが示されている。最近、申請者の研究グループでは地衣化菌類サルオガセ属のハコネサルオガセ(Usnia hakanensis)とコフクレサルオガセ(U. bismolliuscula)のtranscriptomeの解析で、この2種に、同義置換率が有意に異なる遺伝子が混在していることを見いだした。この同義置換率の違いが、突然変異率の違いに由来するかどうかを明らかにするため、transcriptome 解析で得た配列のオーソログ間での同義置換率を比較し、差が有意となった遺伝子については、ゲノム配列からイントロンあるいは周辺領域の配列比較を行う。また、これらの遺伝子の発現量を地衣化という観点から解析する。 昨年度までに、2種のトランスクリプトーム解析から、相同遺伝子を933遺伝子同定し、このうち42遺伝子についての解析を行い、同義置換速度に、0.076から0.268と非常に大きな幅があることを確認した。今年度は、この原因を探るため、まず933 相同遺伝子のオ-ソロジーを明らかにすることを試みた。そのために、ハコネサルオガセのゲノム配列の決定を行った。 共生菌から菌類だけをisolateした菌株から、DNAを単離しライブライリ-を構築しillumina Hiseq2500により配列決定を行った。その結果推定されるゲノムサイズは42Mbで平均的なCovergae数は665と比較的質の良いゲノム配列を得ることができた. 現在、このゲノム配列とハコネサルオガセとコフクレサルオガセのtranscriptomeのデータとの相同配列の解析から、これらの遺伝子が互いにオーソログかどうかの解析を行っている。
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