H28年度はNeo性染色体を持つDrosophila albomicansの近縁種でNeo性染色体を持たないD. kohkoaのゲノム配列を、先進ゲノム支援の協力のもと、PacBioシーケンサーを用いて決定した。また、D. albomicansとは独立にNeo性染色体を獲得したD. americanaの近縁種で同じくNeo性染色体を持たないD. texanaとD. novamexicanaのゲノム配列も同様にして決定した。また、これらの種のオスとメスのゲノムのショートリード配列を別々にHiseqシーケンサーを用いて決定した。現在、これらの配列情報を元にまずはメスの高精度ゲノムアセンブリの構築を行っている。これが完了次第、雌雄のショートリード配列をNeo-X染色体配列にマッピングし、オス特異的な変異箇所を置き換えることで、Neo-Y染色体の構築を行う予定である。 また、D. americana、D. texana、D. kohkoa、D. novamexicanaの4種について幼虫、蛹、成虫の雌雄個体のRNA-seqを行った。現在、H27年度に行ったD. albomicans、D. nasutaのRNA-seqのデータと合わせ、遺伝子発現解析を行っている。 得られたデータを解析したところ、D. albomicansでは同じくNeo染色体を持つD. mirandaに比べてNeo-Y染色体上で発現していない遺伝子の割合が高いことが明らかになった。これはD. albomicansの方がより最近Neo性染色体を獲得したことと矛盾する。したがって、Neo-Y染色体上で生じている遺伝子のサイレンシングの多くが突然変異ではなくエピジェネティックな修飾によって生じている可能性が示唆された。
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