常染色体が性染色体になると安定した性決定を行える一方、生物はY染色体の退化という潜在的不利益を被る。しかし、生物は進化において何度も独立に性染色体を獲得してきた。この謎を解く有効な手段の1つはY染色体の退化過程を明らかにすることである。そこで本研究では、性染色体を最近独立に獲得したショウジョウバエ3種およびその近縁種のゲノム配列を決定し、Y染色体の退化過程を明らかにすることを目的とした。その結果、Y染色体の退化の程度は、必ずしも性染色体になってからの時間に比例しないことが分かった。このことは、Y染色体化直後はクロマチン修飾などにより多くの遺伝子が可逆的にサイレンシングしている可能性を示唆する。
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