従来、真菌類は従属栄養性とされていたが、単体硫黄を基質とする化学合成的な生育やC1- S化合物である硫化カルボニル(COS)の分解を複数の真菌株において我々は明らかにしてきた。昨年度に引き続き、単体硫黄存在下での生育の詳細はFusarium solani NBRC 9425株を用いた。培養は通常の化学合成独立栄養細菌の培地調製法に則り行っているが、オートクレーブなどの操作により懸念される夾雑物の影響を排除する場合は別のガラス容器内に培養容器を密閉後、滅菌を行った。単体硫黄の種類により硫黄酸化に差が見られたため、培養には硫黄(和光純薬)を使用した。共存する有機化合物の硫黄酸化活性への影響を確認するために、昨年度は酵母エキスを用いて最大の活性を得られる濃度を調べたところ15 mg/Lが最大であり、40 mg/Lまではその83~86%の活性を維持していた。一方、下限濃度に関しては、0.01及び0.1 mg/Lの濃度では対照と同程度の硫酸イオン生成が、1及び10 mg/Lでは促進が見られ、極めて低濃度の有機物によって硫黄酸化に対する促進効果があるものの、全く添加していない場合でも硫酸イオン生成が見られ、有機物を含まない培養条件において完全な硫黄酸化系が進行していることを確認することができた。硫黄あるいは有機物を生育基質とする細胞のタンパク質について二次元電気泳動を行い、分子量50-90 kDaの範囲のタンパク質に硫黄によって誘導される複数の顕著なスポットを確認した。今後これらのタンパク質について解析を実施する。 COSの分解についてはTrichoderma sp. THIF20株について酵素精製を進め、10残基のN末端アミノ酸を決定した。今後はこの情報をもとに遺伝子のクローニング、大腸菌での発現を試みると共に、単体硫黄酸化系との関連について検討を進める。
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