研究課題
酸素の有無にかかわらず生育可能な真核生物について、好気培地と嫌気培地でそれぞれ培養し、トランスクリプトーム解析を行った。それぞれの条件から得られた転写産物配列には、ミトコンドリアゲノム由来の転写産物断片や、ミトコンドリアゲノムの複製、転写などに関わるタンパク質をコードした転写産物が含まれていた。これらの配列は、本種にミトコンドリアゲノムが存在していることを示している。そこでミトコンドリアゲノムの全長解読を行った結果、約30 kbほどの環状ミトコンドリアゲノムの全配列の決定ができた。本ゲノムには電子伝達系複合体Iを構成するタンパク質であるNADH dehydrogenaseや複合体IIIで機能するCytochrome b、複合体IVで働くCytochrome c oxidaseなどの遺伝子が同定された。しかし近縁種の完全好気性種のミトコンドリアゲノムと比較すると、遺伝子数の減少やゲノムサイズの縮退が観察された。このことは、嫌気環境への適応進化により、ミトコンドリアでの酸素を用いたエネルギー生産への依存度が低くなっていることを示唆している。さらに、トランスクリプトームデータを探索すると、好気的エネルギー生産に必要な核遺伝子はほぼそろっていることが判明した。さらに、絶対嫌気性真核生物がもつとされる嫌気的なエネルギー生産に関わる遺伝子も同定された。これらの転写産物は、好気培養と嫌気培養によって転写産物量が変化することが定量的比較トランスクリプトーム解析によって判明した。本種は酸素濃度によってその生存戦略を適切にコントロールしていることが強く示唆される。これまでに、あらたに嫌気環境に適応した真核生物を新たに2株確立・維持している。今後、これらの種の同定を詳細に行っていく。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、トランスクリプトームデータとミトコンドリアゲノムデータをそろえることに成功した。また予定通り、新たな嫌気性真核生物の株を確立した。
これまでも研究計画通り進んでいる。大幅な計画変更は必要ないと考えられるため、今後も研究計画通り実験を進めていく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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