本研究は、複数の栄養段階を縦断した種の多様性と生態系サービスの連鎖効果を検証することを目的とした。水田に生息する造網性クモ類(天敵)、害虫(ヨコバイ、ウンカ、カメムシ)、ハエ目昆虫(クモの主要な餌で、「ただの虫」)の3つの栄養段階に着目し、「ハエ目の種多様性が天敵の多様性を支え、それが害虫防除の効果を強化する」、という仮説を検証した。調査と解析の結果、ハエ目の種の季節的入れ替わりがハエ目全体の密度を高め、密度の変動を安定化させることがわかった。また、ハエ目の量は、クモ類の個体数に影響を与えること、クモ類の個体数は害虫のカメムシ類に負の影響があることが示唆された。
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