生物は太陽光エネルギーをどのような機構で化学エネルギーに変換しているのか?次世代シーケンサーの登場により機能未知光受容体配列(ロドプシン)が爆発的なスピードで蓄積する近年において、その利用機構はこれまで考えられていた以上に多様であることが分かってきた。本研究では、シアノバクテリアの持つ機能未知ロドプシンの機能と生理的役割を、情報科学および全遺伝子合成技術を駆使し多角的に解き明かすことで、これまで考えられてこなかった2つの光エネルギー利用機構がどのように「機能」および「光の色」の使い分けを行っているのかを明らかにすることを目的として行った。 平成28年度に、淡水性シアノバクテリアであるSynechocystis属の細菌が持つ未知ロドプシンの機能解析を大腸菌を用いた異種発現系で実施した。その結果、光で塩化物イオンや硫酸イオンを細胞外から細胞内に輸送するロドプシンであることが明らかになり、SyHRと命名した。本年度は、SyHRの生理的役割を調べるため、シアノバクテリアSynechocystis PCC 6803株に自然形質転換法を用いてSyHRの相同組み換えを行った。その結果、PCC 6803株のゲノム上にSyHRを組み替えることに成功した、今後得られた変異株を用いてSyHRの生理的役割の解明を行う予定である。また、シアノバクテリアSyHRと類似した配列を持つ海洋細菌を見出し、機能および分光的特徴を報告した。今後、これまでの研究で得られた株を用いて、クロロフィルとロドプシンの使い分けの詳細を明らかにしたい。
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