研究課題/領域番号 |
15K14603
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
曽田 貞滋 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00192625)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ベイツ擬態 / 超遺伝子 / 遺伝的多型 / 多型維持機構 / 自然選択 |
研究実績の概要 |
本研究では,ナガサキアゲハのメスにおける擬態型と非擬態型の表現型分化に,シロオビアゲハと同様,doublesex遺伝子領域の多型が関わっていると仮定し,その領域の配列変異と斑紋型の対応を検討した.その結果,斑紋型によって配列(アレル)が異なり,メスの表現型が擬態型アレル優性とする1遺伝子座2対立遺伝子モデルによって説明できることを明らかにした.さらに異なる配列部分を定量PCRによって区別する方法を開発した.これにより,野外で採集された個体について,遺伝子型を決定することができるようになった.とくに斑紋型多型のないオスであっても遺伝子型が分かり,集団の遺伝子頻度が推定できるようになった.台湾花蓮市における遺伝子頻度調査を,5月,6月,7月,8月,9月,11月,2月に行い,ナガサキアゲハおよびモデルのアゲハ類の個体数を調べた.また採集したサンプルから遺伝子頻度動態を調べた.また,台北市の台湾師範大学において,メスの斑紋型に対するオスの選好性に関する予備実験を行った.実験室において,25℃,14時間日長(長日),12時間日長(短日)条件で飼育し,擬態遺伝子型により発育成長特性に差があるかを調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
斑紋型の遺伝子型を判別する手法を確立でき,それを利用して野外での遺伝子型頻度動態を調べることができた.また擬態多型の適応的意義に関わる研究も,予備的段階であるが,生理的特性・配偶者選択等について行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,野外におけるメスへの捕食圧,オスの配偶者選択という側面で,斑紋多型がどのような選択圧にさらされているかを検証することに焦点をおいて研究を進める.これまでの試行実験において,生きた個体を用いた実験,あるいは標本を用いた実験は,実行するのが非常に困難であることが分かってきているので,プリントしたメスの翅の模型を使った実験を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
野外調査旅費,物品費が当初計画した予算より下回ったため,差額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
論文作成(英文校閲)・出版費用,DNA分析試薬等の購入経費の一部として使用する.
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