研究課題
遊牧民族と農耕民族の間での生活環境の相違が、エピジェネティクス情報に及ぼす影響を全ゲノムレベルで評価するべく、遊牧民族であるモンゴル人24名と、農耕民族であるタイ人24名(いずれも成人男性)の末梢血DNAのゲノムワイドメチル化レベルについて、Human Methylation450Kアレイ(Illumina)用いて定量し、集団間でメチル化レベルが大きくことなるCpG配列の同定を試みた。アレイ解析で取得したデータの解析にはRnBeadsソフトウェアを用いた。その結果、ソルビトール脱水素酵素(SORD)遺伝子のプロモーター領域の上流約1.5キロベースに位置するCpG配列群が、モンゴル人集団とタイ人集団で大きなメチル化レベルの差異をしめし、モンゴル人で特に強くメチル化されていることが明らかになった。この発見を再検証するため、新たに日本人成人女性16名の末梢血DNAのメチル化定量をMethylation EPIC アレイ(Illumina)を用いて実施した。その結果、当該CpG配列では、日本人に比較してモンゴル人で強くメチル化されている傾向が確認された。ソルビトールはエネルギー代謝や細胞内浸透圧の調節に関与する低分子で、飢餓、寒冷、乾燥などのストレスへの応答と深く関係していることが、動物を対象とした研究から報告されている。モンゴル人での高いメチル化傾向から、この集団ではSORD遺伝子の発現量が低下しており、その結果細胞内ソルビトールの貯蓄量が増加していることが推測される。当該メチル化部位のSROD遺伝子発現量への影響と、その生物学的意義について、今後のさらなる研究が期待される。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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