研究課題/領域番号 |
15K14618
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
|
研究分担者 |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
前田 享史 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90301407)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 発汗機能 / 遺伝 |
研究実績の概要 |
環境適応能としてヒトにおいて発達した発汗機能が環境変化に対してどのように適応し,改善されるかなど今日においても残された課題は多い.特に,汗腺に関わる固有の遺伝子とヒトの発汗調節機能との関係は不明のままである.腫瘍壊死因子受容体の一種である「エクトジスプラシン(EDAR)」遺伝子のEDAR370Aとエクリン汗腺数との関係が指摘されている.本研究では汗腺に関わる固有の遺伝子と発汗調節機能との関係を明らかにする.H27年度は日本人における汗腺に関わる固有の遺伝子解析とエクリン汗腺活動との関係を明らかにするため,EDAR370A遺伝子の分析の確立を試みた.次に発汗機能と遺伝子との関係を検討するために,イオントフォーレーシスによる局所発汗能力を測定した.この方法はコリン性作動薬(アセチルコリンあるいはメタコリン)を皮膚に電流をある一定時間(5分間)通電することにより発汗を誘発するものである.遺伝子を同定した被験者に,環境温27℃,相対湿度50%に設定した人工気象室内で,座位安静を40分間保持した.その後,前腕にてイオントフォーレーシスによる発汗試験を行い,発汗誘発部位の能動汗腺数(汗を出す汗腺の数)と一定面積当たりの局所発汗量(カプセル換気法)を測定し,発汗量を汗腺数で割ることにより,単一汗腺当たりの汗出力を求めた.EDAR370A遺伝子の同定は行うことが出来たが,この同定に時間を要し,被験者数を十分に確保できなかった.EDAR370A遺伝子を有している被験者の活動汗腺数はいくらか多い傾向にあったが,はっきりした違いではなかった.イオントフォーレーシスによる発汗量はEDAR370A遺伝子を有している被験者の方が多い傾向にあったが,単一汗腺当たりの汗出力には大きな差がなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究課題の一つは,研究実績の概要で述べた能動汗腺数と関係があるEDAR370Aの同定方法を確立することであった.この確立に関してはおおむね順調に進んだ.しかし,同定の方法などで時間を要し,被験者数を十分確保でききず,普遍性のあるデータが得られなかった.この点がおおむね順調に進展しているとした理由である.
|
今後の研究の推進方策 |
H27年度の研究遂行において以下の課題が示された. 1)被験者数の確保.被験者のリクルートを早い時期に実施する. 2)遺伝子以外に発汗機能に関わる要因を統一し,より遺伝子の影響を鮮明にする.そのため,体力・体型・年齢・性別を正確に把握する. 3)H28年度に予定している全身温熱負荷の実験の前に,イオントフォーレーシスによる局所発汗量とEDAR370Aとの関係をより明確し,それをもとに全身温熱負荷の実験を検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
EDAR370A遺伝子の同定に時間を要し,被験者数を十分に確保できなかった.主に分析に関わる費用として次年度の使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は被験者数と分析に関わる費用として,次年度使用額を主に使用する予定でいる
|