研究実績の概要 |
92名の男子大学生被験者を対象に情動研究で広く用いられている画像刺激(International Affective Picture System; IAPS / Lang et al., 2008)を用いてセロトニントランスポーター遺伝子多型によって反応に差異が見られるか実験を行った。 その結果、Lアレルをもつ被験者は、ERP初期成分で注意の配分が異なることが示された。先行研究よりLアレルにはネガティブ刺激の選択的回避と同程度にポジティブ刺激を選好するバイアスがあることが示唆されており(Fox et al., 2009)本研究もそれを支持した。一方でss型は、初期成分には対象による注意の差がないにも関わらず、複雑な認知処理を反映する後期成分において、人物画像により注意反応を示した。これらの実験により、特定の刺激に対する注意が高まるタイミングがタイプによって異なることが示唆された。 さらに、若年男性111名を対象に性格特性と同遺伝多型の関連を検討したところ賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度(児島ら、2003)の相関がss型では見られずLアレルを有する被験者群でのみ相関を示した。この性格特性は賞賛や非難に対して生じる感情や認知方略(問題状況に対処する際の一貫したパターン)に影響するため、これらの個人差にセロトニントランスポーター遺伝子多型が関連する可能性が示唆された。
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