研究課題/領域番号 |
15K14623
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鳥山 欽哉 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20183882)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 育種学 / 遺伝学 / 遺伝子 / バイオテクノロジー / 植物 |
研究実績の概要 |
通常のイネミトコンドリアは直径1 μmほどであり、パーティクルガン法などの形質転換実験には小さすぎる。我々らはイネのミトコンドリア分裂因子であるダイナミン様タンパク質遺伝子のドミナントネガティブ変異OsDRP3A(K63A)を導入し、巨大化したミトコンドリアを持つ組換えイネを作成した。本研究では、この組換え体を材料として、ミトコンドリアゲノム編集システムを開発することを目的とした。 イネのミトコンドリアで発現させることを狙って、イネミトコンドリアで発現量が多い26SリボソームRNA遺伝子のプロモーターとGFPを連結したコンストラクト(rrn26 pro:GFP)を作成した。細胞質雄性不稔性イネミトコンドリア内在性のプラスミド様環状分子(B1)とGFP発現カセットを連結したミニサークルDNAを作成した。 巨大化したミトコンドリアを持つ組換えイネのカルスをAA培地で培養することにより、細かい細胞塊からなるサスペンジョンセルを得た。ブフナーロートを用いてろ紙に広げ、パーティクルガン法で遺伝子導入を試みた。イネミトコンドリアの内在性B1プラスミドに組み込んだrrn26 pro::GFPを導入する実験を行ったが、GFPの蛍光は観察されなかった。導入したGFP発現カセットにさらなる改善が必要である可能性も考えられたため、ミトコンドリアで発現誘導することが報告されている酵母のCOX2プロモーターを用いたGFP発現カセットをB1プラスミドに組み込んだ導入ベクターを再構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イネのミトコンドリアでGFPを高発現させるため、イネミトコンドリアのゲノムアレイで明らかにした発現が高い遺伝子rrn26のプロモーター領域に、バクテリアのコドンに最適化されたsGFPを連結し、さらに転写終結シグナルとしてnad6の3’領域を結合したGFP発現カセットを既に構築している。sGFPの上流にはバクテリアで翻訳レベルを上げるとされているgene 10リーダー配列、SD配列、 および、 融合タンパク質発現に用いられるpET3aを連結するという工夫がしてある。しかし、このrrn26 pro::GFPを導入する実験を行ったが、GFPの蛍光は観察されなかった。コンストラクトそのものに問題がある可能性も考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリアで発現誘導することが報告されている酵母のCOX2プロモーターを用いたGFP発現ベクターを再構築したので、これをイネミトコンドリア内在性のB1プラスミドと連結したミニサークルDNAを作成し、ミトコンドリアへの遺伝子導入成功が報告されている細胞膜透過配列およびポリカチオン配列を有する融合ペプチドを利用した遺伝子導入法(Chuah et al 2015, DOI:10.1038/srep07751)を利用し、ミトコンドリアに遺伝子導入することで解決したい。イネミトコンドリア内在性のB1プラスミドが自己複製し、ミトコンドリア人工染色体と機能することを期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
我々が独自に工夫して構築したGFP発現カセットを導入する実験を行ったが、GFPの蛍光は観察されなかった。GFP発現カセットそのものに問題がある可能性も考えられGFP発現カセットを再構築したので、今年度は本格的な遺伝子導入実験には至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
再構築したGFP発現カセットを用い、ミトコンドリアへの遺伝子導入成功が報告されている細胞膜透過配列およびポリカチオン配列を有する融合ペプチドを利用した遺伝子導入を精力的行うための消耗品に使用予定である。
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