イネのサスペンジョンセルにパーティクルガン法を用いて遺伝子導入を行い、ミトコンドリアゲノム編集システムを開発することを目的とした。 通常のイネミトコンドリアは直径1 μmほどであり、パーティクルガン法などの形質転換実験には小さすぎると考えた。我々らはイネのミトコンドリア分裂因子であるダイナミン様タンパク質遺伝子のドミナントネガティブ変異を導入し、巨大化したミトコンドリアを持つ組換えイネを作成した。巨大化したミトコンドリアを持つ組換えイネのカルスをAA培地で培養することにより、細かい細胞塊からなるサスペンジョンセルを得た。サスペンジョンセルは、ブフナーロートを用いてろ紙に広げ、パーティクルガン法で遺伝子導入を試みた。イネミトコンドリアの内在性プラスミド様B1 DNAに組み込んだrrn26 pro::GFPを導入する実験を行ったが、ミトコンドリアにおけるGFPの蛍光は観察されなかった。導入したGFP発現カセットに改善が必要である可能性も考えられたため、ミトコンドリアで発現誘導することが報告されている酵母のCOX2プロモーターを用いたGFP発現カセットを再構築した。このプラスミドをタマネギ表皮に導入したところミトコンドリアと考えられる細胞内顆粒でGFP発現が観察できた。酵母のCOX2プロモーターを用いたGFP発現ベクターをイネミトコンドリア内在性のプラスミド様B1 DNAと連結したミニサークルDNAを作成した。イネサスペンジョンセルは強い自家蛍光を発し、導入したGFPまたはRFPの蛍光を確認するのは困難であった。 B1 DNAの存在量が品種によって異なること、および、戻し交雑を行って核を置換しても安定に保持されることを明らかにした。B1 DNAが自己複製し、ミトコンドリア人工染色体として機能することで、ミトコンドリアゲノム編集システムを開発できると期待される。
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