研究課題/領域番号 |
15K14625
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
佐藤 豊 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (40345872)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イネ / プロテオーム |
研究実績の概要 |
従来のプロテオーム解析では、プロテアーゼによりペプチドに分解されやすく、かつイオン化しやすいペプチドを量が多い順番に解析するため、試料中に微量に含まれる転写因子等の制御因子に関する情報はほとんど得られない。本研究代表者はイネの胚形成機構の解明に長年分子遺伝学的手法で取り組んできた。この間、転写レベルでの制御ネットワークの重要性を多数明らかにしてきた。一方、転写ネットワークの上位で何がおきているのか、ほとんど情報は得られていない。本研究では、近年ヒトを材料に発展してきた次世代プロテオーム解析技術を導入し、これまで植物では全く手付かずの領域であった、胚形成初期に働く、転写ネットワークの上位の制御レイヤーの解明に取り組む。 本研究は、次の三つのパートからなる。①転写因子をコードするイネESTクローンからin vitro転写・翻訳系を用いて、タンパク質合成を行う。②合成したタンパク質を用いてMRMトランジション情報を取得する。③イネの野生型胚および各種変異型胚よりLMD法により胚を切り出し、MRMトランジション情報を用いた「次世代プロテオーム解析」を行う。 これまでに、まとまった数のESTクローンを用いてin vitro転写が可能であること、LMD法によりイネの初期胚を切り出すことが可能であることを確認した。今年度は、LMD法で切り出した初期胚試料の質の確認を行なった。具体的には、LMD法により回収した胚試料からDNA, RNA,タンパク質を回収した。当初、初期胚からDNAやRNAを回収することが困難であったが、いくつかの工夫により、安定的に回収できるようになった。また、DNA, RNAについては各種イネ遺伝子をPCR法により増幅が可能であることを確かめた。このことから、LMD法で回収したイネ初期胚を比較的インタクトであることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年4月に、研究代表者の異動があり、実験室等の整備を行い、実験ができる環境を作り上げるのに相当の時間を要した。また、質量分析によりMRMトランジション情報を取得する連携研究者ならびに質量分析器そのものと物理的に離れてしまい、なかなか研究の連絡や作業が以前ほど、気軽にできなくなっている。このため、当初の計画よりは、研究の進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vitro翻訳と翻訳産物を質量分析器にかける実験を行う予定であるが、サンプルをある程度の数、まとめて準備するなどの工夫をして、効率良く連携研究者との共同実験を進められるよう調整する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、平成28年度が本研究の最終年度で、研究を完了する計画であった。ところが、平成28年4月に研究代表者の異動があり、新任地での研究室の立ち上げ、ならびに実験を開始できる状況になるまでに相当の時間を必要とした。この分が、当初計画にはない研究の遅れの主な原因であり、このため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の使用計画については、使用内訳の人件費と旅費が代表者の異動にともない、当初の計画通りに使用できなくなった。具体的には、異動により雇用予定のパートタイム実験補助員の雇用ができなくなった。また本研究に必要な質量分析器を用いた解析を行うために、連携研究者が所属する名古屋大学までの旅費が当初より多く必要になる。このため、一部物品の節約ならびに当初人件費として使用するための費用を使って旅費を捻出する。使用する期間については、平成29年度の後半に実験を完了する予定である。
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