研究課題/領域番号 |
15K14628
|
研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
村井 耕二 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (70261097)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 春化 / ミトコンドリア / 花成 / コムギ / 細胞質置換系統 |
研究実績の概要 |
1)細胞質置換系統CSおよび正常細胞質系統(gen)-CSにおけるVRN1遺伝子領域のヒストンのメチル化パターン変化と春化との関係の解析 春化処理した正常細胞質系統CSおよび細胞質置換系統(gen)-CSと、春化処理をしていないCSおよび(gen)-CSの第3葉期の葉を用いて、免疫クロマチン沈降(ChIP)-qPCR解析を行い、ヒストンのメチル化修飾程度を比較した。ChIP-qPCR解析の結果、春化したCSおよび(gen)-CSの第1エキソンでは、CSでは3つの同祖遺伝子(vrn-A1、vrn-B1、VRN-D1)のすべてにおいて、春化によるH3K4me3のメチル化レベルが上昇した。上昇の程度は優性対立遺伝子であるVRN-D1で顕著であった。一方、(gen)-CSは、BゲノムとDゲノムでは春化の効果は現れず、Aゲノムでは、春化することによってvrn-A1におけるH3K4me3のメチル化レベルが逆に減少した。遺伝子発現の抑制指標であるH3K27me3のメチル化レベルは、CSも(gen)-CSも変わらず、春化により3つの同祖遺伝子のすべての領域で減少した。以上より、VRN1の第1エキソンにおけるヒストンのメチル化は、同祖遺伝子ごとに異なったパターンであることが示された。また、細胞質置換系統を用いた解析より、VRN1の発現減少および花成遅延は、春化による第1エキソンにおけるH3K4me3のメチル化修飾によるエピジェネティック制御が関係することが示された。そして、このメチル化修飾は細胞質を置換することによって変化するため、ミトコンドリア由来の何らかのシグナルが関与している可能性が示唆された。 2)「春化センサー遺伝子」の発現パターン解析 昨年度に同定した「春化センサー遺伝子」候補のミトコンドリア遺伝子(新規orf)について、春化による発現上昇を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
花成促進遺伝子VRN1の同祖遺伝子ごとのヒストンのメチル化パターンが、異種細胞質ミトコンドリアゲノムの効果によってどのように影響を受けるかについて、詳細に明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
「春化センサー遺伝子」の機能を推定する。これまでの研究により候補orfの遺伝子産物は膜タンパク質であると考えられる。この膜タンパク質の作用により、ミトコンドリアから何らかのシグナル(ペプチドあるいはsmall RNA)が放出されているのではないかと推定している。このミトコンドリア由来のシグナル(ミトコンドリア・レトログレード・シグナル)の何らかの作用により,VRN1遺伝子のエピジェネティック状態の春化による解除が阻止されると思われる。 今後、細胞質置換系統で特異的にミトコンドリアから放出されるペプチド・シグナルをHPLCにより同定したい。 形質転換による証明はいまだ困難であるため、作用機作の解明は変異体を使用する方向にシフトさせる。
|