研究実績の概要 |
病原菌に対する防御応答のダイナミックな変動を捉えるため、本課題では、アグロバクテリウム感染細胞特異的に、エピジェネティックな防御応答反応を解明することを目的としている。平成29年度は、核膜にビオチン化を受けるGFPを発現する易形質転換品種カサラスの形質転換体の種子から誘導したカルスに、植物体内では恒常的に発現するトウモロコシユビキチンプロモーターにビオチン化酵素BirA遺伝子を繋げたコンストラクトを導入したアグロバクテリウムを感染させ、INTACT法でアグロバクテリウム感染細胞の核単離を試みた。イムノブロットではGFPがビオチン化されることを確認していたが、INTACT法で十分な量の目的細胞核を得ることができなかった。アグロバクテリウム感染細胞の核を単離してATAC-seqを実施する予定であったが断念し、ATAC-seq同様にクロマチンアクセッシビリティを間接的に解析できるMNase titrationの条件検討を行った。MNase処理時間によってシグナルが強くなる領域、弱くなる領域、変化しない領域があることを確認でき、イネでもMNase titrationが適用できることを確認した。カルスにアグロバクテリウムを観戦させた際の時系列RNA-seqを行い、どのような防御応答が起きているか解析した。その結果、アグロバクテリウムを感染して0,5,24,48時間後では発現変動遺伝子が同定できず、72時間後に初めて409遺伝子の発現が上昇し、609遺伝子の発現が減少した。Gene ontology解析を行った結果、発現上昇遺伝子にはミトコンドリア関連の遺伝子が多く含まれており、細胞としてエネルギー生産に傾いていることが示唆された。一方発現減少遺伝子には特定のGOを持つ遺伝子群の濃縮が見られなかった。
|