昨年度までに、合計で760個体のF2集団を展開し、高温環境下で栽培した時の生重量を高温耐性の指標としてQTL解析を実施した。その結果、第4染色体上に効果の強いQTLを見出した。本研究では、申請者らが開発した遺伝子型決定方法である multiplex PCR targeted amplicon sequencing (MTA-seq)(論文投稿中)を活用している。
今年度は、前年度までとは異なる自然系統由来のF2集団を展開してQTL解析を実施した。その結果、第4染色体上の同じ領域にQTLが検出されたため、高温耐性の原因遺伝子は少なくとも同じ領域に存在することを明らかにした。そこで、これまでに、より多くのマッピング集団を展開してきた昨年度解析の自然系統に注力して研究を進展させることにした。
当初の計画では、F2集団でのQTL解析と申請者所属の研究室で整備されたゲノム情報統合データベースを活用して、候補遺伝子を同定する予定であった。しかしながら、当該QTL領域での組換え頻度が低く、F2集団で原因遺伝子をマッピングすることが困難であると考えられた。そこで、原因遺伝子を効率よくマッピングするためにF3集団を展開した。F3集団は、当該QTL領域の遺伝子型がヘテロ接合型の個体を複数選抜し、それらを自殖させて作出した。このF3集団の高温環境下での栽培試験と遺伝子型情報を、これまでのF2集団の情報とあわせて解析した結果、QTL領域を220 kb にまで絞り込み、この領域には40個の遺伝子が含まれていた。また、通常環境と高温環境下での親系統のトランスクリプトーム解析を行ったところ、40遺伝子のうち23遺伝子のみがある程度発現している(FPKMが1以上)ものであった。この23遺伝子を有力な候補と考えて、過剰発現体の作出を進め、高温耐性の原因遺伝子がどれであるかを決定するための実験を進めている。
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