研究実績の概要 |
嫌気処理による根の伸長抑制程度が異なる6系統を対象に,細胞間隙の形成率,嫌気代謝関連酵素活性,嫌気耐性候補遺伝子の発現量を比較した. その結果.嫌気条件下における細胞間隙率は, 嫌気感受性系統と比較して嫌気耐性系統で高い傾向が認められた.嫌気条件下でアルコール発酵を促進するADH活性は,嫌気耐性系統では有意に低かった.一方,アルコール発酵の代替経路を促進するとの報告があるAlaATの活性は,嫌気耐性系統では低く維持される傾向があるものの,ADH活性ほど顕著な差は認められなかった.アルコール発酵におけるピルビン酸脱炭酸酵素に必須な補因子の生合成に関与するとの報告があるTHI1の発現量は,1系統を除く嫌気感受性系統はほぼ変化しないのに対し,嫌気耐性系統は全て抑制された.これらの結果から,嫌気条件下における根系の発達には細胞間隙の形成による通気能の獲得, あるいはADHやAlaATが関与しない代謝経路が関係している可能性が示唆された. 期間全体を通して,ダイズミニコアコレクションを対象に,好気および嫌気条件が根系質に及ぼす影響ならびに嫌気耐性を評価した.その結果,好気区に対して嫌気区では,根長増加量,根表面積増加量,根体積増加量,地下部乾物重は有意に減少し,平均根直径,地上部乾物重は有意に増加した.また,地上部乾物重を除く全ての形質で交互作用(系統×処理)が認められた.主成分分析の結果から,植物体の大きさ(大/小)および嫌気耐性(高/抵)に基づいてミニコアコレクションを4つのグループに分類したところ,それぞれのグループと原産地の間に関連が認められた.また,嫌気耐性と細胞間隙の形成率,嫌気代謝関連酵素活性および嫌気耐性候補遺伝子の発現量の間に密接な関係が認められた.これらデータの蓄積により,SNPs情報の公開後にはゲノムワイド・アソシエーション解析の実施が可能となった.
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