本研究課題では、省力・高効率なサクラ属果樹形質転換技術を開発することを目的に、自家不和合性機構を利用した花粉媒介形質転換系について検証した。初年度のH27年には,自家不和合性花粉側因子SFB-S6遺伝子の部分配列からヘアピン配列(hpPav6)を設計し、花粉特異的なLAT52プロモーターに連結したhpPav6配列をクローニングした一過的形質転換コンストラクト(pTRlb-hpPav6)を構築するとともに、オウトウ花粉に対するパーティクルボンバードメント条件を検討した。 最終年度であるH28年度には、1)アグロインフィルトレーション法による、ベンサミアーナタバコ葉におけるhpPav6のSFB-S6遺伝子発現抑制効果の検証、2) pTRlb-hpPav6ボンバードメント佐藤錦花粉の自己花柱内における花粉管伸長の観察、3)同ボンバードメント花粉を用いた佐藤錦の結実試験、を行った。1)において、SFB-S6遺伝子の発現レベルはhpPav6のco-infiltrationによって半減することが確認された。2)については、観察した100本の雌ずいのうち2本において花柱基部付近に到達した花粉管が認められた。しかしながら3)において、約500花に対して受粉を行ったものの、結実に至ったものは認められなかった。以上のように、本研究では自家不和合性機構を利用した花粉媒介形質転換系を開発することはできなかったものの、その実現にむけた一定の成果を得ることができた。
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