研究実績の概要 |
本研究では、花成抑制機能をもつFT/TFL1ファミリー遺伝子群にCRISPR/Cas9システムにより変異を導入し、早期開花を誘導するとともに、その後の交雑により組換えDNAが除かれた個体を選抜することで、狙った位置に組換えをおこし、かつ組換えの痕跡を残さない個体を果樹ではじめて作出することを目標としている。 前年度までに高い幼樹開花率を示すグレープフルーツを供試して、幼樹開花率を上昇させるための技術開発をおこなった。当該年度はCRISPR/Cas9ベクター構築のため、グレープフルーツにおけるFT/TFL1ファミリー遺伝子の系統解析と配列特定をおこない、発現解析より花成制御における役割推定をおこなった。 クレメンティンのゲノム配列を元に解析をおこなった結果、FT/TFL1ファミリーに属する遺伝子はCEN, TFL1, BFT, FT, MFTクレイドに分けられることが明らかとなった。このうち先行研究よりFTとMFTはシロイヌナズナと同様カンキツ属においても花成促進機能をもつことがわかっている。CEN, TFL1, BFTはシロイヌナズナにおいて花成抑制機能をもつことがわかっているがカンキツ属では詳細な解析がおこなわれていない。そこでこれら3つの遺伝子群について、幼樹開花性をもつグレープフルーツと幼樹開花性をもたないナツダイダイの珠心胚由来実生よりクローニングをおこない配列比較をおこなった。両種とクレメンティンにおいて大きな配列の違いは認められなかった。一方発現解析の結果、TFL1とCENの発現量は両種で大きな差異はなかったものの、BFTは秋季のナツダイダイで高発現していた。そこでBFTに変異を挿入することで幼樹開花を誘導できる可能性を考え、BFTをターゲットとするCRIPR/Cas9ベクターの構築を進めた。
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