本研究では、花成抑制機能をもつFT/TFL1ファミリー遺伝子群にCRISPR/Cas9システムにより変異を導入し、早期開花を誘導するとともに、その後の交雑により組換えDNAが除かれた個体を選抜することで、狙った位置に組換えをおこし、かつ組換えの痕跡を残さない個体を果樹で作出することを目標としている。 当初想定した研究材料であるカンキツに加えて、幼木相が比較的短くかつ年複数回開花性をもつブルーベリーや早期開花性をもつ亜熱帯果樹を実験対象として新たに加え、幼木相が短く年数回開花性をもつ果樹の探索や情報収集をおこなった。ハイブッシュブルーベリーのうち一部の品種は、台湾など日長が短く温暖な低緯度地域では春季に加えて秋季にも開花することを確認した。特に‘ブルーマフィン’は環境条件にかかわらず夏から冬にかけて連続開花し、台湾では常緑性で周年開花することも確認した。これらを材料として用いることで研究が進展すると考え、ブルーベリーを材料に実験をおこなった。 花成抑制遺伝子であるCEN遺伝子をターゲットとしたCRISPR/Cas9ベクターを4種類作製し、計約3000枚リーフディスクに対しアグロバクテリウム法により遺伝子導入を行った。GFP発現およびカナマイシン耐性により形質転換体を選抜した。PCRで外来遺伝子の挿入を確認した形質転換体13系統中7系統でT7E1 assayにより変異が検出された。シークエンス解析によりそのうち数系統でCEN遺伝子内に1塩基の欠損が見られた。しかしながら研究期間内において、顕著な表現型の変化は観察されなかった。
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