研究課題/領域番号 |
15K14653
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北島 宣 京都大学, 農学研究科, 教授 (70135549)
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研究分担者 |
中崎 鉄也 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60217693)
山崎 安津 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 研究員 (70582584)
清水 徳朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (90355404)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 園芸学 / カンキツ / 無核性 / マーカー / 育種 |
研究実績の概要 |
無核紀州型無核性品種「サザンイエロー」を花粉親とし、ブンタン「CRC4422」、「ポメロ白タイプ」、「江上文旦」および「水晶文旦」との交雑個体の結実果実の種子調査を行った。本年度は結実個体が少なかったことから、昨年度の結果を統合し160個体について解析を行った。種子形成の表現型は、Aタイプ種子の出現率が90%以上の個体を無核、0%の個体を有核、それ以外を偽有核として調査した。その結果、有核64個体、偽有核55個体、無核41個体となり、理論的な分離比2:1:1に適合しなかった。これらのうち127個体について、無核性発現に連鎖するマーカー解析を行った結果、75個体はこの無核性マーカーを有しており、52個体は無核性マーカーを有していなかった。マーカーの有無に関する分離比は理論値の1:1に適合した。 「CRC4422」×「サザンイエロー」後代の146個体についてRad-secを行い、ブンタン「CRC4422」と「サザンイエロー」の連鎖地図作成を試みた。ブンタンゲノムは高度にホモ化しており、「CRC4422」ヘテロとなるSNPマーカーは61個しか検出されなかった。一方、「サザンイエロー」では多くのSNPマーカーが検出され、連鎖地図が作成できた。「CRC4422」×「サザンイエロー」後代で無核性マーカーを有している34個体について、Aタイプ種子の出現率に基づきQTL解析を行った結果、「サザンイエロー」連鎖地図の5番染色体上と9番染色体上にLOD値が2.5を超えるQTLが検出された。これらは、Aタイプ種子発現を抑制する遺伝子の可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は結実個体が少なかったため、種子形成の表現型を十分に特定することができなかったため、進捗状況は遅れており、29年度まで延長して本研究を実施する必要に迫られた。 Rad-sec解析により「CRC4422」と「サザンイエロー」の連鎖地図を作成した。「CRC4422」では検出されたSNPマーカーが少なく、ラフな連鎖地図であった。しかし、これまで連鎖地図が報告されていなかったブンタンにおいて連鎖地図を作成することができ、進捗状況は良好である。 「CRC4422」×「サザンイエロー」後代で精度の高い無核性マーカー解析を行い、無核性マーカーを有している個体について、Aタイプ種子の出現率に基づきQTL解析を行った結果、「サザンイエロー」連鎖地図において無核性発現を抑制する遺伝子の可能性のあるQTLが2座検出された。そのため、進捗状況は良好である。 以上のことから、種子形成の表現型の特定については、結実個体が少なかったために不十分であり、進捗状況が遅れているため、本研究の29年度までの延長を余儀なくされた。しかし、連鎖地図作成やQTL解析では進捗状況は良好であり、全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
結実個体を確保して、十分な種子形成の表現型の特定を行う。また、「サザンイエロー」連鎖地図に検出された2つのQTLについてPCRマーカーを作成し、種子形成表現型との関連を調査して、これらのQTLが無核性発現を抑制する遺伝子の可能性について検証する。さらに、「CRC4422」と「サザンイエロー」のコンセンサスマップを作成し、Aタイプ種子形成率が極めて高い集団と極めて低い集団とを比較し、連鎖地図上のマーカー間の多型解析を行い、無核性発現を抑制する遺伝子の候補マーカーとする。 一方、「ポメロ白タイプ」×「サザンイエロー」後代および「江上文旦」×「サザンイエロー」後代についてRad-sec解析を行い、連鎖地図を作成するとともに、「CRC4422」×「サザンイエロー」後代で得られたQTLや多型解析の結果の検証を行う。これらの結果から、無核紀州由来の無核性ブンタン育種において、無核性個体を早期に選抜できるマーカーの開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
「サザンイエロー」後代系統の研究材料を育成している広島県果樹試験場では、平成28年1月の低温障害により各系統の開花・結実が不良となり、多くの系統で種子形成表現型の「有核」、「偽有核」、「無核」の判定ができなかった。本研究を遂行する上で、各系統の種子形成の正確な表現型の判定が不可欠であり、平成29年度に各系統の種子形成表現型を確認する必要が生じた。そのため、本研究の補助事業期間を延長する。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は次年度繰越金1,128,660円を活用し、70万円でRad-sec解析を外注するとともに、他は無核性発現抑制と関連するマーカー解析等のために使用する。
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