研究課題/領域番号 |
15K14654
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤木 剛士 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50611919)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 倍数化 / 性決定 / カキ / エピジェネティック制御 / 栽培化 / 適応進化 |
研究実績の概要 |
本研究ではカキ属植物の倍数化に伴う特性変化として、果実サイズ・形状の多様性獲得と性決定メカニズムに焦点を置いている。平成27年度においては特に後者についての結果が得られており、ここではその概要について記述する。 六倍体の栽培ガキ(D. kaki)と近縁二倍体野生種マメガキ(D. lotus)間において見られる性表現の変化は、Y染色体因子でありsmall-RNAをコードする性決定因子OGIが、栽培ガキにおいて半不活性化されており、その後にOGIのターゲットであるMeGIのエピジェネティック発現制御機構が成立したことに由来するものであることが示唆された。栽培ガキの種全体において、OGIのプロモーターにSINE様レトロトランスポゾンが保存されており、これが半不活性化の原因であると同時に、このアレルに非常に強い選抜あるいはボトルネックが生じたと考えられた。すなわち、倍数化において安定化したOGIの発現は性比の歪みを生じ、特にカキ属のXY型性決定システムでは雄性個体の比が非常に高くなるため、OGIへの半不活性化因子が選抜された可能性が考えられた。この結果として、OGIが作用した後に引き起こされるMeGIのプロモーターにおけるDNAメチル化の維持・解除が性決定の律速段階となり、栽培ガキにおいては、Y染色体を有する個体特異的に雌雄異花同株性を発現することが示唆された。しかし、栽培ガキの個体内中における雌雄花への方向性を決定づける内的環境因子については未同定であり、今後はこの内的因子の探索を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倍数化による性決定メカニズムの変化については大きな進展が見られ、野生二倍体種と栽培化された倍数体種間における性表現変化の明確な原因を同定できた。今後も、これまでは同定できていない、性表現の可塑性に影響を与えうる内的環境条件や性染色体因子以外の遺伝的要因を探索していく予定である。 一方、果実サイズや形状の多様化に関しては、その特性化方法について、検討が進んでおらず、ようやくSHAPEによる安定した評価方法を確立した段階である。平成28年度ではトランスクリプトームを駆使して、二倍体と六倍体栽培ガキの比較を行い、倍数化とその後のゲノム再編成や栽培化による適応進化・人為的選抜による遺伝子ネットワークの変化について吟味を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
倍数化による性表現の変化機構については、概ね当初の目的を果たしているが、六倍体栽培ガキの分離集団を用いた実験を追加し、雌雄異花同株個体間の性比(雄花・雌花の個体内比)決定に寄与する因子の同定を目指す。具体的には、Captureシステムによって分離集団のエクソーム解析を行い、存在する多型と性比についての相関性から寄与する遺伝子座の同定を行う予定である。 倍数化における果実形質への影響は平成28年度に中心的に行う予定である。現在、果実発現全遺伝子の全長を網羅するためのIsoSeqライブラリを構築しており、これを参照情報としたトランスクリプトームを行う予定である。形状解析プログラムSHAPEを用いた形状数値化主成分とトランスクリプトーム間の相関解析によって、倍数化によって影響を与えうる主因子の同定を行う予定にしている。得られた主要要因に対して、栽培ガキ品種間におけるトランスクリプトーム・Genotyping by Sequence(GBS)解析から制御ネットワークや実際に寄与する遺伝因子の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
大規模シークエンス解析を予定していたが、平成27年度では解析用ライブラリの作出とその検討をするにとどまった。これは、並行して進めているマメガキドラフトゲノム情報構築とリンクさせる計画をしていた研究部分であったが、ドラフトゲノム解読に遅れが生じていたため、来年度に解析を延長する。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に計画していた次世代シークエンサーであるIllumina HiSeqシリーズによる5解析を全て平成28年度に行う予定である。これによって生じる額がおよそ1,400,000円であり、おおよそ平成27年度と一部を平成28年度分から負担することによって実施可能である。平成28年度分の予算については、別途、本来の計画通りに使用する予定である。
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