ブドウ着色過程における内生植物ホルモン解析を行ったところ、ブドウ着色機構において中心的な役割を果たすと考えられている植物ホルモンに関して、予想と異なる結果が得られた。そこで、得られた結果が普遍的であることを確認するため、研究計画を一部変更して研究期間を延長し、複数の品種を用いて植物ホルモン内生量について年次変動等を確認する試験を実施した。 ‘ピオーネ’果皮のアントシアニン含有量は、満開後65日前後に明確な増加が観察され着色開始期と考えられた。果皮の内生ABAは,満開後65日に含有量が減少する傾向がみられ、これまでの結果と同様だった。したがって‘ピオーネ’における着色開始期に果皮のABA含有量が減少する傾向について、年次による相違がないことが確認された。赤色系品種の‘安芸クイーン’においては、満開後60日前後にアントシアニン含有量の増大が観察され、果皮のABA含有量は満開後40日~50日の期間に増大したが、満開後60日前後には減少した。‘安芸クイーン’についても‘ピオーネ’と同様に着色開始期に果皮ABA含有量が減少する傾向があることがわかった。また,非着色系品種の‘ハニービーナス’では、果実成熟期に果皮ABA含有量が大幅に減少していた。‘ハニービーナス’においても‘ピオーネ’及び‘安芸クイーン’と同様の時期に果皮の内生ABAが減少する傾向があることが明らかになった。本研究でABAが着色期に減少した原因として、着色期の直前までは比較的高いABA含有量を示していることから、ABAは着色期の直前までに作用していることが推測された。 JA類の効果的な処理条件の検討は、収穫後処理が有効であることが示され、圃場処理では効果が明確ではなかった。そのため、着色不良となった果実への収穫後処理条件を検討し着色に適した条件を明らかにした。
|