研究課題/領域番号 |
15K14676
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小山 博之 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90234921)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 集団遺伝学 / ストレス耐性 / 分子相互作用 |
研究実績の概要 |
植物は環境ストレスに対して様々な適応戦略をとるが、その中で分子‐分子相互作用は重要な役割を担っている。アルミニウム,塩集積などの土壌ストレスに対する適応では、単独で作用する分子は見出されているが,相互作用する分子の多くは未解明である。これは、致死的形質の特定が困難であることや、逆遺伝学解析時の形質相補など分子遺伝学の限界による部分が大きい。この研究ではこれらの技術的問題を回避するために、「ゲノム遺伝学」の手法であるゲノムワイド関連解析を一歩進めて,重要な相互作用遺伝子対を特定することを目的としている。研究1年目には、塩耐性に関する共発現ネットワークと遺伝計算の統合、アルミニウム耐性と有機酸放出に関しては、交互作用遺伝子座を特定した。前者では、共発現する遺伝子群(モジュール)と、遺伝解析で検出された遺伝子座の関係から、特定のモジュールが耐性機構と関わることを明らかとした。その中には、これまでに断片的にしか解明されていなかった、細胞壁構造の維持に関わる分子群からなるモジュールが検出され、細胞壁の安定化が塩耐性を支配する一つの要因であることなどが明らかになった。一方、後者では、アルミニウム応答型リンゴ酸放出の重要遺伝子である、ALMT1と転写因子などの間の交互作用を検出できた。なお、様々な環境ストレスで生じるシグナル物質でもある過酸化水素に関しては、耐性を指標とするGWASから、特定のトランスポーターが輸送に関与することが明らかとなり、検証実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝学的な解析では、交互作用遺伝子座の大規模計算に関しては、プログラムの修正などが必要で予想以上に時間を必要とした。その一方で、共発現遺伝子ネットワークとゲノムワイド遺伝解析の統合方法の開発など、計算機内で行えることに関しては十分な成果が得られたと判断している。分子生物学的な項目(計算から得られるモデルの証明)に関わる領域では、遺伝子破壊系統の育成などを実施し、期間内にモデルを検証できる状況である。以上から、おおむね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、主に分子生物学的な検証(成果発表に必要な分子生物学実験の実施)に力点を置くが、繰り越し分の予算を使うことによって十分に実施可能である。インビトロ実験による、転写因子とプロモーターの結合能力の解析なども実施して、期間内に一定の成果を得る計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、当初予定した分子生物学実験に関する項目が、植物の生育の遅延などから次年度に実施することが適当と判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝モデルを分子生物学的に証明するためには、遺伝子破壊株の大規模解析やインビトロでのタンパク・核酸相互作用の検討などが必要となる。これらの項目では、分子生物学用の試薬をある程度多量に使用する必要があるため、次年度の予算と合算することで、当初計画した実験をすべて実施することができる。特に、国際誌への出版などでは、英文校閲や出版費用も必要となることから、成果の公表まで含めると適正に使用することが可能である。
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