研究課題/領域番号 |
15K14679
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 直隆 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20304769)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 一酸化窒素 / 種子発芽 / 8-ニトロcGMP / アブシジン酸 |
研究実績の概要 |
植物の種子発芽誘導のmediatorの一つである一酸化窒素(NO)の直接的なターゲット分子種の解明のため、本年度はまず、レタス種子(Lactuca sativa L. cv. Green wave)の高温(33℃)発芽阻害活性検定を用いて、NOの発芽誘導効果を調べた。 NOの発生剤であるニトロプルシドナトリウム(SNP)や NOC18を、それぞれ100μM以上の濃度で処理したレタス種子は、 33℃の高温時でも80%以上発芽した。このNOによる高温時の発芽誘導は、NOの消去剤PTIO、活性酸素消去作用を有するアスコルビン酸やスーパーオキシドイオンの消去剤tironにより阻害された。また、peroxynitriteの放出剤SIN-1やS-Nitrosoglutathioneが、SNPやNOC18と同じく発芽誘導活性を示したことから、活性窒素種(RNS)がNOの高温発芽誘導シグナルの重要な要因として働いていることが示唆された。一方、 NO合成酵素阻害剤L-NAMEや、NO感受性グアニル酸シクラーゼ阻害物質ODQ、硝酸還元酵素阻害剤のNaWO4とSNPの同時施用では、高温時でも発芽が認められ、外性NOによる発芽誘導では、NOおよびcGMPの生合成は亢進されることはなく、発芽誘導ではNOによる気孔閉鎖誘導の場合と一部異なった機構でNOが機能していることが明らかとなった。 また、過酸化水素を10mM処理した場合に、レタス種子は高温時でも発芽が観察されたが、この発芽はPTIOの同時施用により阻害された。この結果は、外性の過酸化水素によって種子内で生成した活性酸素種がNO発生を誘導し、高温発芽を引き起こしていると予想できることから、活性酸素種もNOのシグナル伝達に重要な役割を果たすと考えられた。 さらに、ABA代謝阻害剤パクロブトラゾールがNOの高温時発芽誘導を阻害すること、常温時の外性ABAによる発芽阻害がSNP処理により解除されることから、NOの高温時種子発芽誘導におけるシグナルの下流にはABAの代謝促進のメカニズムが含まれることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一酸化窒素(NO)の直接的なターゲット分子種として予想している8-ニトロcGMPを用いて高温時発芽誘導を調べることが重要であるが、アッセイに必要な十分量(10mg)を作製するに至ったおらず、8-ニトロcGMPの詳細な活性の検討を開始できていない状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
8-ニトロcGMPの合成は既に終えHPLC等で精製を開始しているが,必要量を確保するには時間がかかるため、分取逆相TLC等の別の手段を用いて早急に必要量を精製し、それらの発芽誘導活性を詳細に調べる予定である。 また、LC-MS/MS等を用いて、NO発生剤を処理した種子内の8-ニトロ-cGMP の単離・同定を行い、NO発生に伴う8-NO2-cGMPの生成を調べる。さらには、NO発生剤処理時の,種子内のNO発生量とABAおよび8-NO2-cGMP含量を経時的に測定し、種子発芽におけるNO発生→8-NO2-cGMP→ABA代謝のクロストークを解明する。
|