研究実績の概要 |
ヤムイモとはヤマノイモ科の植物の食用種を指す。先進国ではなじみがないヤムイモであるが世界では約6500万トン生産され、主食として重要な地域もある。しかし、その生産は伝統的な農法で行われており生産性が低い。そこで、生産性を上げるために化学肥料を施す試みは多く行われているが、イモの収量に及ぼす化学肥料の効果は不明なままである。申請者らはダイジョ(東南アジア原産ヤムイモ)の新品種の育成過程で(科研基盤B平成25-27年度)窒素肥料がなくても生育する品種を見いだした。この品種の植物体の窒素同位体δ15Nを測定したところ、空気中の窒素を固定している可能性を発見した。その窒素固定寄与率は38%と非常に高かった。マメ科に似た特性をヤムイモが持つことを発見したのは世界で初めてであり、本研究では共生菌の探索と窒素固定能力を明らかにすることを目的にした。 実験の結果、新品種のダイジョから窒素固定細菌を分離することに初めて成功した。DNA解析で特定された窒素固定細菌は根粒菌のRhizobium、Ralstonia属の他、Bacillus、Azospirillum、Pantoea、Shinella、Kosakonia、Pantoea属であった。また、本学の宮古亜熱帯農場で保存するトゲイモ(ヤムイモの一種)からも根粒菌のDevosia属やAzospirillum, Klebsiella, Xanthomonas属が見つかった。次に、ダイジョ19系統を窒素施用と無施肥の条件で栽培して窒素固定細菌の分離を試みた。その結果、全ての系統において、いずれの条件からも窒素固定細菌が分離され、19属が推定された。このうちの10属はマメ科以外lから始めて分離された。これらの結果、多くのヤムイモの生育には窒素固定細菌が関与すると考えられた。
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