研究課題/領域番号 |
15K14681
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
朽津 和幸 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50211884)
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研究分担者 |
来須 孝光 東京工科大学, 公私立大学の部局等, 助教 (50422499)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オートファジー / イネ / 脂質 / 種子登熟 / 澱粉 / タペート細胞 / 花粉 / 雄性不稔 |
研究実績の概要 |
イネのオートファジー実行因子の1つであるOsATG7の機能欠損株(Osatg7-1)を単離し、その表現型を解析した結果、花粉形成不良による重篤な雄性不稔形質を示すことを発見した。一方、Osatg7-1変異体において低頻度で稔実した種子は、澱粉蓄積に異常があることを見出した。すなわち、イネにおいてオートファジーは、花粉形成過程以外に、受精後の登熟過程における栄養供給に重要な役割を果たす可能性が考えられる。オートファジーの時期・組織特異的回復によるOsatg7-1稔性回復能の検証と、種子登熟におけるオートファジーの機能解析実験系の確立を進めた。また葯や生殖期の葉の脂質成分や植物ホルモン、トランスクリプトームの解析を進めた。 出穂期に冷温ストレスを受けたイネは、葯内のタペート細胞の分解不良による、花粉への栄養・材料供給の低下を生じ、花粉不全による深刻な収量低下を引き起こすことが知られており、オートファジー欠損変異体の表現型と類似している。環境ストレスによる稔性低下の一因としてオートファジーが関与する可能性や、オートファジー能の制御により作物のストレス障害を緩和する可能性について検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジーの時期・組織特異的回復によるOsatg7-1稔性回復は、遺伝子発現の微妙な制御が予想以上に困難で、時間を要している。一方、ごく低頻度ではあるが、稔実が可能となる条件を見出し、種子を得ることに成功したので、種子登熟過程における変異体の表現型の解析は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
オートファジーの時期・組織特異的回復に成功すれば、研究の飛躍的進展が見込めるので、試行錯誤を続けて行く計画である。オートファジー能の制御も、時間を要することが予想されるが、稔性や品質の低下を回避する全く新たな方法論の開発に繋がる可能性が期待できるので、挑戦を続ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では、時期、組織特異的遺伝子導入により不稔変異体を稔実させるという、難度の高い実験計画を立てており、その部分については努力を継続している。一方、今年度の研究で、別の方法により、野生型株と比べると未だ圧倒的に少ないものの。得られた種子数を飛躍的に増加させることができた。多くの種子が得られた段階でその表現型を解析する計画のため、そのための費用を平成28年度に計上した。
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次年度使用額の使用計画 |
変異体の種子を今年度中にできるだけ多数得て、その代謝や形態等を詳細に調査し、その表現型を解析するために使用する計画である。
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