• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

脱窒処理の効率化をもたらす微生物代謝の電極電位による制御

研究課題

研究課題/領域番号 15K14683
研究機関筑波大学

研究代表者

星野 貴行  筑波大学, 生命環境系, 教授 (80219170)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード代謝制御 / 廃水処理 / 電気培養
研究実績の概要

電極へ印加する電位によって微生物の脱窒および硝化活性の制御が可能であるか検証するため、本年度はモデル微生物ならびに土壌微生物叢を用い、電位印加下での脱窒および硝化実験を行った。本研究では、炭素棒や炭素繊維フェルトを電極として培養系に設置し、ポテンショスタットで所定の電位を印加することで微生物の代謝制御を図った。
脱窒細菌Pseudomonas aeruginosaや従属栄養硝化細菌Alcaligenes faecalisを培養し、培養液中の硝酸イオンやアンモニウムイオンといった脱窒・硝化に関与する物質の濃度変化を測定したところ、銀-塩化銀基準電極に対して-0.2 V程度の電位で脱窒が、+0.5 V程度の電位で硝化が促進されたことを示唆する結果が得られた。このような電極電位の代謝への影響は、脱窒と硝化がそれぞれ酸化還元電位の低い環境と高い環境で機能する代謝であることと関連していると考えられる。また、土壌を微生物源として培養することで得られた微生物叢を用いて同様の培養実験を行ったところ、電極への電位の印加によって硝酸イオン濃度やアンモニウムイオン濃度の低下が促進されることが示された。土壌微生物叢のような複合微生物系においても電極電位による代謝制御が有効であることは、廃水処理等への応用を視野に入れた際に重要な要素である。
より効果的な代謝制御の可能性を探るため、電極表面へ適当な化学構造を付加した修飾電極の利用を試みた。実験の結果、P. aeruginosaおよび土壌微生物叢における脱窒に関しては、1-アミノアントラキノンによる電極修飾が代謝促進に有用であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

モデル微生物を用いた実験によって、脱窒および硝化が電極電位により促進されうることが示され、また制御に有効な電位をおおまかではあるが明らかにすることができた。複合微生物系においても、同様の電位を印加することで脱窒や硝化が促進されたと解釈できる結果が得られた。また、修飾電極の有効性について計画を繰り上げて実験を行うことができ、脱窒の促進に有効な修飾電極を作製することができた。ただし、現状では硝化を促進できる修飾電極は見出されていない。本手法の汎用性を確認するには、より多くの微生物種や環境試料を用いた実験が必要ではあるものの、現状では次年度の目標である廃水処理への応用可能性の検証に向けて、ある程度順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

引き続き、化学修飾をはじめとした電極の改良を行い、モデル微生物等を用いた実験を通じて代謝制御に有効な電極の作製を図る。特に、硝化については有用な化学修飾が見出されていないため、重点的に取り組みたい。現在のところ、可逆的な酸化還元反応を行える化学種として1-アミノアントラキノンとその誘導体を使用しているが、これらに限定せず広範な化合物の有効性を検証したい。廃水処理等への応用を考慮し、使用する電極の素材や形状についても検討したのち、ベンチスケールの廃水処理装置の製作と、これを用いた長期間のモデル廃水処理実験の実施を予定している。この処理実験を通じて処理効率や運用コストなどの観点から、電極電位による代謝制御の実際的な有効性を検証する。

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi