研究課題/領域番号 |
15K14684
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
辻村 清也 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30362429)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 酵素電池 / 酵素電極 / ホフマイスター / 多孔質炭素 / 酸化還元酵素 / ポリマー |
研究実績の概要 |
平成27年度において,酸化還元酵素電極触媒ハイスループットスクリーニング系の構築にむけた以下の基礎検討を行った.1)多孔質炭素の構造設計:スクリーニングに最適な多孔質炭素材料として“酸化マグネシウム鋳型炭素”に注目した.メソ孔サイズが酵素サイズと同程度場合は高い安定性が得られ,細孔サイズが大きい場合は炭素粒子の内側のメソ孔まで利用できることで酵素担持量が増加し高い電流値が得られることがわかった.2)多孔質炭素の表面設計:キノンや酸化還元色素が酸化マグネシウム鋳型炭素の表面に安定に吸着すること,さらにメディエータとして機能することわかった.これにより,スクリーニングの対象となる酵素のバリエーションが増した.3)スクリーニング:酸化還元酵素と酸化還元ポリマーからなるハイドロゲル修飾電極における最適化条件のスクリーニングに応用し,応答電流値に及ぼす電解質の影響を調べた.電流生成効率に影響する酵素とレドックスポリマー間の相互作用,酵素とメディエータ間の相互作用を電解質の濃度及び種類の依存性を調べることで判別できることがわかった.得られた知見をもとに,ポリマーや酵素表面改質の設計指針を得ることができた.4)酵素を電極触媒として利用する場合,酵素-電極間電子移動メカニズムによって酸化還元メディエータを介した反応系(本研究ではレドックスハイドロゲル型修飾電極)と,それを用いない直接電子移動系に分類することができる.本研究では,いずれのタイプの酵素反応系にも適用できる適用範囲の広いスクリーニングシステムの構築を目指した.5)印刷電極のデザインおよび多孔質炭素インクの調整:多孔質炭素を印刷するためのインク調整方法や成分,条件の最適条件を見出した.また,メディエータを炭素インクに添加することで,均一かつ効率よく修飾することができ,印刷電極を調整した際にも,その活性は失わないことが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題におけるキーマテリアルとなる多孔質炭素について粒子の構造およびメソ細孔構造,表面修飾方法を決定し,多様な酵素のスクリーニングに適用できることが明らかになった.また,印刷電極についても試作できており,当初の計画通り進行し,次年度の研究の準備は整っている.
|
今後の研究の推進方策 |
印刷電極上にメディエータも修飾した多孔質炭素材料を印刷(修飾)し,96穴プレートにおける試験を行う予定である.新規酵素のスクリーニングにメディエータを使用しない系にも,メディエータを必要とする酵素にも利用できることがわかったので,様々な系にて適用できるかどうかを調べる.また,試験するメディエータごとに,基質濃度,pHのみならず,電極触媒としても評価するためには電解質の濃度,種類も検討することが重要であることがわかり,ハイスループットスクリーニング系が有効に機能することを実証する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
試薬や酵素といった消耗品の供給先,使用量,価格を再検討することで研究のレベルを落とすことなく消耗品にかかる経費を節約できた.
|
次年度使用額の使用計画 |
研究成果発表旅費や論文投稿にかかる経費(オープンアクセス)に有効活用する.具体的には第19回ISE Topical meeting(オークランド,ニュージーランド)やElecNano7(リール,フランス)などの国際会議で積極的に研究成果発表を推進する.
|