研究課題/領域番号 |
15K14685
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古園 さおり 東京大学, 生物生産工学研究センター, 准教授 (90321760)
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研究分担者 |
小倉 光雄 東海大学, 付置研究所, 教授 (80204163)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アセチル化 / RNAポリメラーゼ / ECFシグマ因子 / 枯草菌 / 転写 |
研究実績の概要 |
枯草菌ECFシグマ因子の1つであるSigXが1×S胞子形成培地へのグルコース添加により活性化される現象が見出されている。SigXを活性化する炭素源はアセチル化を誘導する炭素源と共通していたこと、さらにアセチル化の基質となるアセチルCoAの主供給経路であるpdh変異によりSigX活性化が阻害された事実から、この現象にアセチル化が関与する可能性が考えられた。本研究では、グルコースによるSigX活性化という現象に着目し、RNAポリメラーゼ(以下RNAP)のアセチル化を介した新規転写制御機構の解明を目的とした。 本年度は、グルコース添加・非添加条件でRNAPにアセチル化を含めた性状の違いを明らかにする目的で、β’サブユニット(RpoC)にHisタグを導入した枯草菌株を構築してRNAPの精製を行った。Ni-NTAカラムを用いたRNAP精製画分をトリプシン消化しLC-MS/MS解析を行ったところ、α、β、β’、ωサブユニットにおいてアセチル化部位が検出され、グルコース添加条件でアセチル化部位数の増加が確認された。また、MSデータを元に精製画分に含まれるシグマ因子の半定量解析を行ったところ、SigAやSigBの存在量はグルコースの有無によって大きく変わらなかった一方で、SigXはグルコース添加条件でしか検出されなかったことから、グルコース添加条件ではSigXを含むホロ酵素形成が促進されていることが示唆された。さらに、このRNAP精製画分を用いてin vitro転写アッセイを行ったところ、SigA依存的な転写活性はグルコース添加・非添加条件で精製したRNAPの間で差が見られなかったのに対し、SigX依存的な転写活性はグルコース添加条件でより高いという結果が得られた。以上のことから、RNAPのアセチル化がSigXとのホロ酵素形成を促進し、SigX依存転写を誘導している可能性が示唆された。シグマ因子と相互作用するβおよびβ’サブユニットのアセチル化部位の変異体の作製を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
グルコース添加条件・非添加条件から精製したRNAPについてアセチル化を含めた性状の違いと転写特性の違いを明らかにし、RNAPのアセチル化がSigX活性化に関わることを強く示唆する結果を得た。当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
RNAPのアセチル化がSigXとのホロ酵素形成を促進する可能性を明らかにするために、シグマ因子と相互作用することが知られているβおよびβ’サブユニットを中心にアセチル化部位に対して変異導入を行い、グルコースによるSigX活性化に影響を与えるアセチル化部位の特定を行う。そのような変異株を取得できたら、in vitro転写実験やトランスクリプトーム解析を行い転写に与える影響を評価する。また、アセチル化に関わる因子の破壊株や過剰発現株を用いて、RNAPのアセチル化が転写に与える影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
作製した変異株の示した想定外の性質により、予定していた実験の実行を延長した。そのため、残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
変異株の作製法を変更した後、予定していた実験を行う。オリゴDNAに100000円、消耗品費(試薬)に83899円支出する予定である。
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