研究課題/領域番号 |
15K14686
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野尻 秀昭 東京大学, 生物生産工学研究センター, 教授 (90272468)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Pseudomonas / plasmid / conjugation |
研究実績の概要 |
今年度は、供与菌1種 (Pseudomonas putida)、受容菌2種 (P. putida及びPseudomonas resinovorans) の接合実験において、ナフタレン分解プラスミドNAH7が優先的にP. putidaに接合伝達する原因はP. putidaのゲノムに存在すると考え、P. putidaのゲノムの一部をP. resinovorans染色体に組込むためのBAC (bacterial artificial chromosome) ライブラリーの構築を行った。また、供与菌とプラスミドの種類を増やして上述の現象の一般性を確かめるため、供与菌としてP. resinovoransを、プラスミドとしてカルバゾール分解プラスミドpCAR1、多剤耐性プラスミドpB10及びR388も使用し、上述の2種の受容菌に対する接合伝達頻度を算出した。その結果、P. putidaを供与菌とした時のpCAR1の接合伝達頻度は両株同程度だったものの、その他の組み合わせでは供与菌と同じ菌種に接合伝達しやすいことが明らかとなった。さらに、環境中には細菌が密集している場所と密度が低い場所があることに着目し、菌密度が接合伝達頻度に与える影響も併せて調べた。本実験に関しては系を単純化するため、供与菌・受容菌ともP. putidaのみを使用し、菌密度を変えた際のpCAR1、pB10、R388、NAH7の接合伝達頻度を算出した。その結果、pCAR1の接合伝達頻度は固体表面での接合時に菌密度の影響を受けやすく、pB10、R388、NAH7の接合伝達頻度は液体接合時に菌密度の影響を受けやすいことが明らかとなった。本結果についてはBioscience, Biotechnology, and Biochemistry誌で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していたトランスポゾンライブラリーよりも効率的に目的の遺伝子を同定するために、予定を変更してBACライブラリーの構築を行ったが、計画通り年度内にライブラリーが完成し、現在スクリーニングを進めている。また当初の計画には無かったものの、菌密度の影響を調べた実験や、供与菌・プラスミドの種類を増やした実験を追加したことで、来年度以降に繋がる興味深い現象を発見することができたため、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
完成したBACライブラリーを用いてスクリーニングを行い、2種の受容菌存在下においてもNAH7を受け取れるP. resinovoransを探索する。その株が持つP. putidaのゲノム断片を確認し、そこに含まれる遺伝子を一つずつ(数によっては複数まとめて)クローニング後、これら遺伝子を過剰発現させたP. resinovoransを用いて同様の実験を行うことで、原因遺伝子を特定する。また当初の計画には含まれていなかったが、供与菌と受容菌の種類をさらに増やすことで、これまでに明らかとなった「供与菌と同じ菌種に接合伝達しやすい」という現象の一般性も併せて調べることにする。
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