研究課題
大腸菌等を長期低温飢餓に曝すと生きていながらコロニー頻度が大きく低下する。このVBNC状態は自然の細菌がコロニーを形成しにくいモデルとされる。これはコロニー形成に重要な遺伝子機能が減衰するためと考え、発現強化によりコロニー頻度の低下が抑制される遺伝子としてcpdAを見つけ、これからcAMPが低温飢餓ストレスに対しコロニー形成能を積極的に低下させることを発見した。cAMP-CRP複合体は非常に多くの遺伝子発現に影響するが、その中からコロニー形成能を直接に正あるいは負に制御する遺伝子を見つけたい。定常期に働くσ因子RpoSはストレスに抵抗する因子として知られており、rpoSはcAMPで転写抑制されるので、cAMPはrpoSを抑制するためコロニー頻度を落としている可能性が考えられた。確かにrpoS欠失株はVBNC条件でコロニー頻度を落としたが、rpoSとcAMP合成酵素CyaAあるいはcAMP受容体CRPとの2重欠失変異株では、大きくコロニー形成能を回復したのでrpoS発現を経由する影響は部分的であることが判明した。cAMPレベルによって転写量を大きく変化させる遺伝子をRNA-Seq解析によって多数得た。もし求める遺伝子Xがコロニー形成能を上げる遺伝子で、cAMPで発現抑制されるのであれば、crpとXとの2重欠失体でコロニー形成頻度は低下する。逆に求める遺伝子Yがコロニー形成能を下げる遺伝子で、cAMPで発現促進されるならば、crp欠失株中でYを強制発現させるとコロニー頻度は低下するはずだと考えた。cAMPで発現変動する遺伝子Xの候補として15個、Yの候補として5個の遺伝子を検証したが、以上の基準を満たすものはなかった。即ちcAMPの効果をコロニー形成頻度として伝える遺伝子はこれらの候補の外にあると結論した。
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Amino Acids
巻: 48 ページ: 2683-2692
10.1007/s00726-016-2304-2