超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisはデンプンやピルビン酸を代謝し、アセチル-CoAの酸化分解と共役したプロトン還元により水素を発生させるが、このアセチル-CoAは最終的に酢酸として排出される。T. kodakarensisはクエン酸シンターゼ・アコニターゼ・イソクエン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子を有しておらず、TCAサイクルが機能していないとされているが、近縁のPyrococcus furiosusはこれらの耐熱性酵素をコードする3遺伝子クラスター(Pf-TCA)を有している。本研究では、T. kodakarensisにPf-TCAを導入し、TCAサイクルを駆動させることによる影響を評価した。 Pf-TCAをシャトルベクターで導入したT. kodakarensis株では培地中有機酸分析やメタボローム解析による細胞内有機酸の分析においてTCAサイクル代謝物の濃度増加が観察され、TCAサイクルが機能していることが示唆された。そこで13C標識ピルビン酸を添加した培養において発生したCO2の13C標識率を検討したところ、顕著な13C標識率の増加は観察されず、導入遺伝子によるTCAサイクルは還元的に機能している可能性が考えられた。一方、Pf-TCAの導入に用いたシャトルベクターの維持のために添加するロバスタチンはアセチル-CoAを前駆体とするメバロン酸経路を阻害することから、その添加はアセチル-CoAや酢酸の代謝に影響を与える懸念があった。そこでPf-TCAを染色体に導入した組換え株を新たに作製した。本株はピルビン酸培地において親株と同等の生育を示した。今後、本株を用いた検討を継続する。
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